第284話 開会式
『ただいまより、第×××回。全国高等学校野球選手権記念大会、開会式を行います』
「あっつい」
「声に出さないでよ。もっと暑くなっちゃう」
地獄か何かですか?
マジでこの開会式のやり方とか、なんとかならんのかね。熱中症とかになったらどうしてくれるんだ。
まあ、こんな時に野球をやるのもおかしいんだが。
トランペットの音が聞こえてきて、続々と入場していく。俺達の番が来て、高校名がアナウンスされると、これまで以上に大きな拍手の音が聞こえる。
「うわっ。すげぇ。満席に近いんじゃね?」
「右、左、右、左、右、左」
開会式にはほぼ満員の観衆が集まっていた。多分この開会式の後すぐに龍宮の試合があるからだと思うけど、それでも凄い。
「こんな満員の中で投げれたら気持ちいいだろうなぁ」
「右、左、右、左、右、左」
まあ、春の甲子園決勝もほぼ満員だったけど。こんな日に投げれるキャプテンが羨ましくて仕方ない。
「なあ、タイガ?」
「右、左、右、左、右、左」
ダメだ。タイガは入場行進に夢中でお喋り出来ない。まあ、喋る事自体が間違いっちゃ間違いなんだろうけど。
そんな意識しなくても前を見てたら自然に足並みを合わせられると思うんだけどな。
意外と緊張しいのタイガはそれだけじゃ不安なんだろう。
甲子園をぐるっと一周して、外野で全校が揃うのを待つ。これってある意味虐待ですよ。こんなカンカン照りのところで待たされるってたまったもんじゃない。
動画とかで見たら最後に一斉に行進するのは確かに揃っててカッコいいんだけどね。
これ、いざやらされる側に回るとしんどいぞ。
しかも俺達はこの後すぐに試合があるときた。体力を余分に削られてる気分だ。まあ、それは相手も同じだし、対等だから文句は言えないんだけど。
もう少しこちらの体調を考えた構成にしてくれないかなと思う次第です。
プラカード持ってる女の子も、必死に耐えてるけど滅茶苦茶暑そうですよ。
「まあ、何が言いたいかと言うと、暑いって事だな。クーラー効いてる部屋に行きたい」
「高校球児にはあるまじき発言だね」
お隣の神奈川県の応慶高校の球児達もうんうんと頷いてますよ。俺だけの意見じゃないってこった。
「ジッとしてる方が辛いんだよな」
「それは分かる」
暑い場所に所狭しと球児達を密集させちゃうとさ。こう、なんか、ムワッとする訳よ。
まあ、やいやい言ってるけど、これ観るなら面白いんだよな。さっきも言ったけど、最後の一斉行進はカッコいいし。
俺も歳を取ったらテレビの前でビールを飲みながら観たりするんだろう。
今年の高校球児も良い顔してるなーつって。
やらされる側に回ると辛いけど、観る側は面白い。なんともやり切れない気持ちであります。
開催側も途中で水分補給の時間を取ったりして、色々対策は考えてるみたいだしね。
古き良き形ってのも大切にして行かないといけないって事だな。
否定ばっかりする老害みたいにはなりたくない。
さっきから文句しか言ってないけどね。
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