第291話 甲子園期間の練習


 「初日に試合があったもんだから、次の試合まで結構空くよな。暇で仕方ない」


 「練習時間も満足に取れる訳じゃないからねぇ」


 甲子園が決まる前から付近の練習場を予約してあるんだけど、時間が決まってるから中々満足に練習出来ない。


 せめてキャッチボールぐらいはいつでも出来る環境が欲しいなぁ。このままだと調子を維持するのも難しいと思う。





 って事でやって来ました。

 甲子園の近くのとあるジム。


 父さんの知り合いってか、元プロ野球選手が経営してるらしく、そこを1日数時間貸してもらえる事になった。これで練習場での練習と、ジムで体を動かす事は毎日出来るようになった。


 まあ、試合日程が詰まってきたら、ジムに来る時間も無くなるだろうけど、序盤はこれで助かるよね。


 更に夜の短い時間だけ、旅館近くの公園もお借り出来る事に。ボールを使う事は出来ないけど、素振りやらタオルを使ったシャドーピッチングは可能に。監督やら学校が動いてくれたみたいでありがたい限りである。


 「初めての夏の甲子園だから、この辺のノウハウがないのは仕方ないよな」


 「だね。何回も来れるようになればその辺も分かってくるんだろうけど」


 金子と二人並んでタオルを持ち、丁寧にシャドーピッチングしていく。


 初出場の痛いところだよね。まあ、頑張って来年と来て、これからも続くであろう後輩にしっかりとそういうノウハウを残してあげれたら良いなと思う所存です。


 「金子は緊張してないの?」


 「春のセンバツでも先発で投げさせてもらった事あるし、そこまで緊張してないかな。試合前とか、いざ投げるってなったら分からないけど」


 金子は精神面でも強くなったなぁ。

 前はかなり緊張してたと思うんだけど。


 「これが俺達の金子効果か」


 「もう。やめてよ。そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、なんか過剰に持ち上げられてる気がするんだよね」


 掲示板で金子は大人気だ。何故か俺は弄られ要員として定着してるけど。まあ、愛されてるってポジティブに捉えてますけどね?


 「お前は自分に自信がなさすぎるのがいけないな」


 「キャプテンや豹馬と一緒に投げてたら、とてもじゃないけど、自分は優れてるって思えないよ」


 金子君はこの自己評価が低いのが頂けない。MAX140キロを投げれて、質の良いカーブを何種類も。それに最近磨きがかかったツーシームもある。これで高校二年で伸びしろがまだまだあるときた。普通に有望株だし、他所の甲子園出場校なら大体はエースを張れる逸材だと思うんだよね。


 それに金子の凄いところはストレートもツーシームもカーブも全くフォームを変えずに投げれるところだ。俺もそうなるように気を付けてるけど、これは打者からしたら相当嫌な事なんだぜ?


 どれだけ速い球を投げようが、鋭いキレの変化球を投げようが、来る球が分かってれば打てる。あ、俺は無理だけどね。レオンが言ってました。


 打者はピッチャーの微妙なリリースポイントの違いとかを本能で察して打ってるみたいだし。それを悟らせない金子のピッチングは充分凄いと思うんだ。


 次の試合でバシッと抑えて自信も付けて欲しいね。東京予選でも良い成績残してるんだし、金子はもう充分全国区の投手だよ。

 

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