第290話 二回戦の相手


 「浜松か」


 「静岡の高校だね」


 次の試合相手が決まった。

 静岡の浜松。


 「あんまり知らない所だな」


 「そんなに甲子園に出てる所じゃないからね」


 タブレットを弄りながら、浜松のデータについて調べてるタイガと喋りながら、俺もそれを見せてもらう。


 「目立った選手は居ないね。予選も投手三人で上手く回しながら勝ち上がってきてるし、打者も特出した成績を残してる人はいない。ワンチャンスをモノにしてそれを守るってところかな」


 甲子園の最高成績は二回戦。

 毎回一回は勝てるんだけど、その後が残念ながらって感じ。


 「ふむん。薔薇巻西より楽そうな相手って言ったら失礼だけど、やり易そうではあるな」


 「だね。金子ものびのびと投げてくれるんじゃないかな」


 俺の出番はないだろうなぁ。一応三回戦を任されてる身ではあるけども。

 せっかくの甲子園だからもっといっぱい投げたいなーなんて思っちゃったり。


 「キャプテンとかレオンに話題を持って行かれてるんだよなぁ」


 テレビのニュースとかSNSを見ても、三井浅見の名前ばっかり。大浦、岸田、后、雨宮の名前もちらほらあるしね。


 三波旋風を起こしてやりたいのに、出番がなけりゃそれも出来ない。選手層が厚いのは良い事なんだけどね。球数投げすぎ問題も龍宮高校にはありえないし。


 「三回戦に完全試合するしかないか」


 「意気込むのは良いけど油断はしないでね」


 「分かってまーす」


 目立つ為にも自分の登板に向けて、気合い入れて準備しておこう。このままレオンだけに良い思いをさせてたまるかってんだ。



 ☆★☆★☆★



 「一回戦には勝ったけど」


 「次がこれだもんなぁ」


 浜松の野球部は一回戦に勝って喜びつつも、二回戦の相手の事を考えて憂鬱になっていた。


 今現在、テレビに繋いで見ているのは龍宮高校対薔薇巻西の試合。 


 「この打線を俺達が抑えるのはきつい。薔薇巻西のエースよりも劣ってる自覚があるからな」


 並んで見ていた一人の男が言い、二人は頷く。予選から投げてきたピッチャー三人で、一回戦でも三人でそれぞれ三回を投げている。


 「打つ方もだ。この一年生が出てきたら2.3点は取れるかもしれないが、エースの三井が出てきたら、取れても1点だぞ」


 「しかも三波もいるだろ? 次にそいつが投げてきたらやばいっしょ。春の甲子園とか、夏の予選の成績も頭抜けてるし」


 「この金子って投手も良いんだよな。MAX140キロを超えるストレートとツーシーム、多彩なカーブもあるし。選手層どうなってんだよ」


 「でもワンチャンあるとしたらこの金子か一年の蛟原だろ」


 「舐めプして一年主体のスタメンとかにしてくれねぇかな」


 浜松の面々はそれからとあーだこーだと話し合う。結果、有効策は特に見つからなかった。試合当日に全員お腹を壊してくれないかなと祈るぐらいだ。


 「俺達はいつになったら二回戦を突破出来るんだ…」


 試合が始まる前からほぼ諦めムードが漂っている浜松の面々だった。

 

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