第315話 VS桐生3


 アウトコースに外れたストレート。

 バッテリーとしては、消極的な勝負に出ようとしてたんじゃなかろうか。


 最悪歩かせても良し、もし打ち取れたらラッキー。後ろの大浦も怖いけど、やっぱりレオンの方が怖いよって事で。


 だが、レオンはそれを見透かしたように、思いっ切り踏み込んでそのボール球を打ちにいった。


 流石に引っ張る事は出来なかったが、打球は左中間の外野の間を破っていった。弾丸のような速度で飛んでいき、ワンバウンド、ツーバウンドしてフェンスに到達。


 二塁ランナーのウルはゆっくりとホームイン。レオンもスタンディングダブルの先制タイムリーだ。


 「バッテリーの対応が中途半端だったな。欲を出さずに、完全に勝負を避けるか、腹を括って勝負するべきだった」


 「結果論だけど、その通りだよね」


 この一点はかなり重い。バッテリーのどっち付かずの対応がこの一点に繋がったと言っても過言じゃない。


 どっちかに割り切って一点取られたなら、まだ心境は違っただろうが、精神的ダメージは凄い事になってるだろう。まあ、指示を出したのは監督かもしれないが。


 どっちにしろ、畳み掛けるチャンス。


 4番の小さな巨人大浦。

 ワンアウト二塁での登場だ。


 「初回から伝令か」


 「とにかく落ち着かせないとね。下手したら初回で試合が決まっちゃうよ」


 桐生ベンチから伝令が出て来た。マウンド上の尾寺君は平静に見えるけど、どうだろうな。


 そしてプレイ再開。


 桐生バッテリーは、大浦にもセンバツでホームランを打たれてるから、さぞかし警戒してるだろう。


 そして大浦は初球をセーフティバント。絶妙に三塁線に転がり、まさかバントをしてくると思ってなかったのか、大浦は悠々セーフ。


 レオンも三塁に進んでワンアウト一塁三塁になった。


 「とことん掻き乱していくな」


 大浦は足も速い。そのデータはあっただろうが、まさかこの局面でバントは予想外だろう。4番っていうバイアスもあるかもな。


 一塁走者の大浦のリードはデカい。尾寺君の弱点をねちねちと攻めて行く。鬼畜鬼畜。ここまで徹底するのも珍しいくらいだ。


 それだけ桐生を警戒してると思って下さい。


 そして得点圏にランナーを置いて、5番の打点乞食。今大会でも相変わらず、得点圏打率8割とバグっている。それでいて、ランナーがいない時でも割と打てるように成長しつつある。


 こいつ、このまま化けたら、マジでレオン超えがあるかもしれん。


 初球。牽制球を二球投げられたものの、大浦はスタートを切る。キャッチャーは二塁に投げようとするが、三塁ランナーのレオンがホームを窺う。


 結局キャッチャーは投げれずに、レオンは三塁に戻って、大浦は二塁に進塁した。


 そしてバッテリーは立ち上がる。満塁策を取って、守りやすくしようという事だろう。純粋に二塁三塁で隼人と勝負したくなかっただけかもしれんが。


 ワンアウト満塁になって、6番の清水先輩が、センターの定位置より少し後ろに下がらせた犠牲フライを放つ。


 いぶし銀の活躍で龍宮に貴重な2点目が入った。


 その後の7番一二三少年は8球粘ったものの、最後はショートフライに倒れて、長い長い一回表の龍宮の攻撃が終わった。


 尾寺君はこの一回だけで40球以上投げてる。これは後半に効いてくるだろう。


 文句なしの初回の攻撃だったんじゃないかな。


 裏の守備はバシッと頼みますよ、キャプテン。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る