未冠の大器のやり直し

第314話 VS桐生2

　2番のタイガ。

　今大会はホームラン打ったりして、打撃でアピールしているが少し影が薄い。それもこれも、龍宮打線の他の面々が派手すぎるからだが。

　でも相変わらず小技で繋いだり、ウルの盗塁の手助けのスイングをしたり。ウルが出塁出来なかったら、ウルの代わりとばかりにネチネチと粘って四球を選んだり。

　縁の下の力持ちポジションで、龍宮には無くてはならない非常に重要な役目を担っている。

　最近のトレンドは2番に強打者を置く事だが、龍宮はタイガがずっぽしハマってるんだよなぁ。ってか、タイガは他校に行けば4番を打てる打力はあるし。強打者じゃない訳ではない。龍宮じゃ、ちょっと霞むってだけで。

　キャッチャーでこんだけ打てたら充分ですよ。キャッチャーの特殊な練習もして、バッティングの練習もして、ピッチャーの管理もして。キャッチャーはほんとにドMかドSにしか出来ないポジションだよね。ノーマルには無理。

　特に龍宮には管理が面倒なピッチャーがいるし。俺とか、俺とか、俺とかね。俺君はもっと反省してもろて。

　それはさておき、タイガの打席。

　ウルが塁上で尾寺君をおちょくり、タイガは打席でおちょくる。バントの構えからヒッティングしてみたり、ヒッティングの構えからバントの構えをしてみたり。なんだかんだでカウントはスリーボールツーストライク。

　ほんと器用にやるよね。ウルは結局走らないしさ。ランナーが進まれるのもウザいが、一塁にずっと居られるのもウザい。尾寺君だけじゃなくて、守備もかなり面倒だろう。

　結局セカンドゴロの進塁打にはなったが、進塁打以上の働きを見せた。尾寺君は打者二人に20球近く投げてるし、守備も毎回チャージをかけたりと神経を削った事だろう。

　前回の春のセンバツでは、桐生がなりふり構わず球数を投げさせる戦法で来たが、今回はそれを龍宮がやる。

　エースの尾寺君を降ろせば、桐生は二番手ピッチャーは随分劣る。ドワイトも投げたりしてるが、コントロールは悪く変化球も大して良くない。球は速くて重そうだけどそれだけだ。龍宮打線なら容易に対応出来るだろう。俺以外はね。

　そして、ワンアウト二塁で迎えるは魔王のレオン。

　桐生バッテリーはいきなり正念場だ。春のセンバツでもレオンは初回に花火を打ち上げてるし、レオンにビビって敬遠しても、次は大浦。

　大浦もセンバツで桐生から、尾寺君からホームランを打ってる。じゃあ大浦からも逃げれば？　残念、そこには打点乞食の5番隼人がいます。満塁の隼人なんて最悪だ。味方の俺達は頼もしいけど、敵からしたらたまったもんじゃないだろう。

　ほんとこの打線は、特にクリーンナップはやばい。やばすぎる。

　「一応勝負か」

　「どうしようもないよね」

　キャッチャーは立ち上がらない。レオンと勝負する気である。そりゃ10割打てるバッターはいないし、俺達は魔王だなんだと騒ぎ立ててるが、あいつも人間だ。打ち損じをする可能性だってある。

　でもねぇ。レオンはねぇ。なんて言うか…勝負所を外さないと言いますか。どうでも良いところでは凡退するけど、チャンスとか試合を決める場面では、ちゃんと決める男なんですよ。

　相手が霊山とか、前回の試合で対戦した松尾君とか。スーパーピッチャーなら勝負になったかもね。

　尾寺君も桐生のエースとして素晴らしいピッチャーだ。それは間違いない。でも、さっき挙げたピッチャーには劣る。

　バッテリーが初球に選択したのは、アウトコースの様子見であろうボール球のストレート。

　レオンはそれに思いっ切り踏み込んで打ちに行った。

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