第305話 北の大地


 「次の相手は北海道の苫小牧農業高校に決まりましたー」


 「桐生とは決勝か」


 「向こうが勝てばだけどね」


 旅館で抽選結果を見てると、対戦相手が決まった。北の大地の猛者と戦うらしい。


 「14-10、11-7、9-8、10-6。びっくりするぐらい乱打戦を制してきてる」


 「すげぇな」


 龍宮の打線は高校一だと思ってるし、対抗出来るのは桐生くらいだと思ってたんだけど。まさか、こんなところに伏兵が隠れてるとは。


 春のセンバツで戦った鹿児島も中々のモノだと思ってたけど、今回は出てないからなぁ。県予選の決勝で負けたらしい。代わりに出てきたところも既に敗退している。


 「逆にピッチャーはあれだな。何人も継投して目先を誤魔化してなんとか凌いでるって印象だ」


 「専業ピッチャーってのが居なさそうなんだよね。背番号1を付けてる人も本職は別ポジションっぽいし」


 龍宮と乱打戦で勝負しようって事をかな? 残念ながら俺達は今まで戦ってきた相手とは一味違うぞ? なんたって龍宮は打線だけじゃなくて投手にも良い選手が揃ってますから。


 「俺が先発したいなぁ。こういう打撃に自信のあるチームを完膚なきまでに捻じ伏せたい」


 「先発は金子みたいだよ」


 「なぬ!?」


 タイガと喋ってたら衝撃の情報が。

 もう先発が決まってたのかね? 今から監督のビール腹をたぷたぷしてアピールしに行こうと思ってたんだが。諦めたらそこで試合終了だよの先生並みに立派な体をしてるからな。


 「パンがアピールしに来ると思ったんだろうね。面倒だからお前から言っておいてくれって監督が」


 「ガッデム」


 流石監督。俺の行動はお見通しであったか。でもでも、これは俺が決勝で投げるフラグでは? 順番的にそうだもんね? 


 監督から決勝はお前に任せたぞっていう厚い信頼の表れではなかろうか。


 「一応金子に全力で六回まで投げてもらって、そこからパンとスイッチするのが予定らしいよ。試合展開で変わるだろうけど」


 「あれー?」


 監督ー? それは決勝はキャプテンでいくって事ですかー? まあ、まだ勝ってないのに先の予想するのはあれだけどさ。


 「もし、決勝に進んだらキャプテンだと思うよ。高校最後のマウンドになるんだし」


 「いや、まだ世界大会があるじゃん。この調子ならキャプテンは間違いなく選ばれるでしょ」


 「それとこれとはまた別でしょ。龍宮で投げる公式戦最後の試合だよ? ドラフトの事もあるし、監督はキャプテンに華を持たせてあげたいんじゃないかな」


 「それを言われると弱いでやんす」


 今年は台湾で世界大会がある。甲子園が終わってからすぐだから、そこでも一応アピールは出来るっちゃ出来る。


 注目度はあんまり高くないけどね。


 「清水先輩も選ばれるだろうね」


 「俺達はどうだろうなー」


 三年主体で選ばれるだろうが、ここまで活躍した龍宮の二年組を呼ばないのも、それはそれで問題がありそうな予感。民意的に。


 「俺達は高野連に嫌われてるし、呼ばれないでしょ。三年ならまだしも」


 「まあ、別にあんまり興味がないから良いけど」


 強がりじゃないよ? ほんとだよ?

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