第157話 VS桐生9
七回裏。所謂ラッキー7の攻撃だ。高校野球でそれを言うのかは知らないけど。
相手エースは続投。レオンからの打順だが、今回は勝負するのか。
「するしかないよな。次は大浦だし」
さっきのホームランの事がある。安易に歩かせる訳にはいかないだろう。
100球をこえて、疲れが見えているエース尾寺に果たして抑えられるのか。
「つってもレオンは10割打者じゃないし。打ち損じとかもあるわけで」
レオンはショートゴロに抑えられる。そして続く大浦もライトフライ。
エースの気迫のピッチングってやつか。物凄く気合いが入ってるのがこっちまで伝わってくる。
「さて。隼人はどうせアウトだし、準備しますかね」
ランナーが居ない隼人なんて、俺が打席に入ってるのと変わらん。
期待するだけ無駄ってもんだよ。
「そう思ってたんだけどな」
レフトに上がった打球はラインドライブな軌道でスタンドに入って行った。
信じられん。思わずキャッチボールで捕球し損ねたくらいだ。
隼人の今大会第二号ホームランで貴重な追加点をゲット。何故か龍宮ベンチが滅茶苦茶驚いてるけど。
「お前どうしちゃったんだよ。ランナーいないぞ? 幻覚でも見えてたのか?」
「うるせぇ」
確かにこの試合で打点はあげてないけど。
まさか、自分から打点1を取りに行くようになったの? ソロホームランで打点乞食するようになったら、お前無敵になるじゃん。
「最近大浦に成績を離され気味だからなぁ。俺も活躍して爪痕残しておかねぇと。応援してくれてる彼女に申し訳ねぇ」
黙れリア充。くたばりやがれ。爆発しろ。
「はいはい。隼人君の彼女ぱぅわーは凄いですねぇ。はぁー、羨ましい限りですわぁ」
「ふっ」
鼻で笑うな。勝ち誇るな。ムカつく野郎だぜ。
「チキンがよぉ。さっさと渚に告白して付き合えば良いだろうが」
とりあえず呼び捨てをやめようか。なんか嫉妬する。チキンなのは弁解の余地もないんだけど。
「俺、甲子園で優勝したら告白するんだ」
「あー! パンが訳の分からないフラグ建てた! ばっかじゃないの!?」
耳聡く聞いていたタイガに怒られた。
なんか言わないといけない気がして。後、背後から物凄く殺気を感じる。
レオン様がお怒りになられてるご様子。俺は絶対に振り向きませんよ。
「おっ! チェンジだ! さーて、この回もしっかり抑えるぞー!」
俺は全力疾走でマウンドに向かう。
逃げ足の速さはウルにも勝てるな。
そして、八回表はヒットを一本打たれるも、しっかり無失点に抑えた。
裏の攻撃は龍宮高校は三者凡退に終わり、いよいよ九回。
「後三人で優勝かぁ」
「ちょろいとか思ってない?」
しみじみと思っていたら、タイガわざわざマウンドまでやってきた。
秋季大会決勝の最終回を思わせるガチガチさだ。
俺の能天気さを分けてもらいにきたんだろう。
「ちょろいなんて思う訳ないだろ。俺の魔球、ツーシームをヒットにされたんだぞ」
「たまたまっぽかったけど」
魔球がたまたまで打たれていいわけないだろ。
甲子園が終わった後の課題が決まったぜ。
「まっ、緊張することないさ。これから何度も味わう事になるしな」
これからの高校生活で負ける予定はもうないので。夏の時みたいに悔しい思いはしたくない。
俺は最後まで笑って高校生活を終えてやるぞ。
「じゃ、頼んだよ」
「お前はいつも通り構えていればいいよ。俺がそこに寸分違わず投げ込んでやる」
自信満々な顔をタイガに見せる。
こういうのは女房役の役目なんじゃないのか。
なんで、俺が緊張をほぐす役をやってるのやら。
戻ったタイガを笑いながら見送り、俺はいつもの様に構えた所に投げ込んだ。
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