第91話 VS三高1


 本日も快晴なり。

 三高との秋季大会決勝戦。

 俺は緊張する事なくいつも通り眠り、朝に目覚める。


 「おお。体が軽い。流石ママンだぜ」


 肩肘も問題ないし、体力も良好。

 ばっちり戦闘体勢だ。

 待ってろよ、霊山。

 ボロクソに泣かしてやるからな、レオンが。




 「観客席は満員だねー」


 「夏にちょっとした炎上騒ぎがあった試合の再戦だからね」


 本日会場の神宮球場が既に満員。

 最高だね。


 「あーテンション上がって来た。早く投げてー」


 「相変わらずの強心臓っぷりで羨ましいよ。また怪我するのだけは勘弁ね?」


 「おい、フラグみたいな事言うのやめろ」


 思い出しちゃうでしょうが。

 俺があんなに落ち込んだのは中々ないぞ?


 「先発はしっかり霊山だからな。絶対負けねぇ」


 「なんだかんだ初の投げ合いだからねぇ。そういう意味でも注目されてる試合だよね」


 ネットニュースでは、世代別No.1を決める戦いとも言われてるからな。

 まぁ俺が1番に決まってるんだが。


 「ペース配分には気を付けて投げろよな。正直霊山から簡単に点を取れるとも思わないし」


 「レオンがなぁ。練習ではポコポコ打ってたけど試合ではどうなるか」


 霊山との相性抜群のレオンが結果を出してくれたら早い話なんだが。


 「初回は相手の狙いを探りながらリードするよ。多分待球だろうけど」


 「高校入って連投してないからなぁ。体力を削りにくるのは間違いなさそう」


 「じゃ、いつも通りのピッチングを期待してるよ」


 「あいあい」


 神宮のまっさらなマウンドもいいですねぇ。

 なんだかプロになった気分。


 

 試合は三高が先攻で始まる。


 先頭バッターはこの秋からスタメンに入ってる1年生の柳生。

 ここまで出塁率が5割近い中々厄介なバッターだ。


 審判からプレイの合図がかかる。

 いつも通り、ノーワインドアップから体を少し捻る。

 なんちゃってトルネード投法だ。

 腕を鞭の様にしならせて、タイガのミットをめがけて投げる。


 初球はインハイへのストレート。

 見逃してストライク。

 左打者の柳生とは初対戦だし、かなり見にくいだろう。

 伊達に左バッター殺しと呼ばれていない。

 尚、レオンと白馬君は例外である。


 2球目はアウトローにナックルカーブ。

 バッターは反応したが手を出さずボール。

 うーん? 狙い球を絞ってる系なのか?

 ツーストライクまで手を出さないのか。

 どっちかはまだまだ判別つかない。


 3球目はインローへスラッター。

 柳生の腰は引けていたが判定はストライク。

 やっぱり左手打者にら特にスライダー系が有効だな。

 普通に打ってくるレオンがおかしいんだ。


 4球目はアウトコースにストライクからボールになるスイーパー。

 柳生は泳ぎながらバットを振るがボールに当たらず三振。

 厄介な先頭バッターを仕留めてワンアウトである。


 「変化球のキレ良し。ストレートも走ってるし、今日の俺は無敵では?」


 早くも合法麻薬が頭を駆け巡るが、油断はしない。

 三高のバッターはどいつもこいつも厄介だ。


 それでも、2.3番を内野ゴロに打ち取り三者凡退スタートである。

 とりあえず霊山に向かってドヤ顔しながらベンチに戻る。

 試合前は向こうがピリピリしてたから話せなかったんだよね。

 入れ込みすぎて空回りしてくれないかな。


 「柳生は三振取れたけど、どいつもこいつも簡単には空振ってくんないね。ツーストライクまでは振ってこないし」


 「でも簡単にストライク取りにいったら打ってくると思うよ。多分、基本方針はツーストライクまで手を出さないんだろうけど、各々に狙い球があって、それが甘く入ってきたら打ってくるんじゃないかな? それぞれが反応した球種が違うし」


 打者毎に狙い球が違うパターンか。

 うーん、面倒くさい。

 それをしっかりやれる技量があるのが凄いと思うけど。


 「まぁ、今日は絶好調っぽいし3点取ってくれたら勝てるよ」


 「霊山から3点か。きっついなー。相変わらず気持ち悪い球投げてるし」


 俺とタイガが喋ってる眼前では、霊山が投球練習をしていた。

 

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