第92話 VS三高2
「はぁー。なんでアンダースローで140キロ近く出てるんですかねぇ」
霊山は大阪の名門シニアでぶいぶい言わせてた、右投げのサブマリンである。
そのくせに、MAX138キロのストレート。
カーブにスライダー、シンカーと変化球も超一級品。
特にシンカーの変化の仕方がかなり気持ち悪い。
「中学の頃は、ストレートはまだ130キロ出てなかった筈なんだけどなぁ」
高校に入ってから10キロ以上球速が伸びてる。
まぁ俺もだけど、アンダースローでこの球速は反則だろう。
先頭バッターのウルは、中学時代に対戦経験はあるがやっぱり苦戦している。
高めに抜けてくるボールを待つしかないっぽいよなぁ。
低めにコントロールされるとかなり打ちにくいらしい。
俺は対戦した事ないから分からんけど。
結局ウルは5球目のカーブを引っ掛けてファーストゴロ。
タイガは初球のストレートを狙い打ち、良い当たりだったが、ショートのファインプレーでギリギリアウト。
そして注目の対決である。
シニアでは霊山からホームランしか打ってない男、浅見レオンである。
初球、アウトコースにボールからストライクになるカーブ。
レオンはそれに手を出し、レフトのスタンドへ。
しかし、ギリギリファールゾーンに切れた。
「うーん。今の狙ってたろ? それを仕留め損ねたって事は、やっぱりスランプなのか。それとも思った以上に霊山が上手なのか」
「本人が不満そうな顔してるから、多分仕留め損ねた方だと思うよ。困ったねぇ」
確かに、納得のいってない顔してるな。
これは今日長引くかもなぁ。
右バッターは、打ちにくいから大浦と隼人も攻略はすぐには出来ないだろうし。
2球目はインローへのストレート。
見逃してストライク。
3球目はアウトコースへシンカー。
これはボールゾーンに外れていった。
4球目、インハイへのストレートをレオンは腕を畳み腰の回転だけで打つ。
打球はライト後方へ。
入ったかなと思ったけど、ライトがフェンスギリギリでジャンピングキャッチ。
この回2度目のファインプレーでチェンジである。
霊山を見ると、かなり顔が引き攣ってたけどホッとしてるな。
「んはー! 入ったと思ったけど! 惜しかったなー」
「微妙に擦ったな。やっぱり微妙にバッティングがズレてる感じがする」
「まあ、後2打席で結果出してくれればいいさ。今日は我慢比べも覚悟してたし。とにかく霊山にだけは絶対負けねぇ」
三高打線にはレオンがいないし、俺の方が有利か。
そんな事を思いながら、二回のマウンドに上がる。
先頭の4番をツーシームで空振り三振。
5番をストレート3つで見逃し三振。
6番はチェンジアップで空振り三振。
三者三振でスパッとスリーアウト。
うーん、肩があったまってきたし、三振取ってるお陰でアドレナリンがギュンギュン出てる。
ふははははは!
どっちが先に折れるか勝負だぜ、霊山。
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