第93話 VS三高3


 試合は四回表まで進み0ー0。

 俺と霊山はお互い打者一巡をパーフェクトに抑えている。

 大浦と隼人、清水先輩もアンダースローを中々打ちあぐねている感じだった。

 隼人はともかく、大浦と清水先輩はこんな質の良いサブマリンは初めてだろうしな。

 案の定我慢比べ大会になりそうだ。


 打順はトップに戻って柳から。

 劣化白馬君だと思って投げてる。

 将来はあんな風になるんだろうなと容易に想像出来るな。

 願わくば厨二病でない事を祈ります。


 慎重に投げてるが、やっぱりまだまだ白馬君程ではないな。

 4球目のスラッターをフロントドアに決めて見逃し三振。

 左バッターにはこれがやたらと有効です。

 これで今日早くも7つ目の三振。

 ペース配分も悪くないし、まだまだいけそうだな。


 「三振取りすぎて、脳がふやけてきた。三振中毒状態や」


 なんか偶にあるんだよね。

 三振取りまくってると、気持ち良くなってくる。

 まぁ、つまり絶好調という訳で。


 2番と3番も三振で、今日2度目の三者三振。

 前の回から合わせて五者連続である。


 「今の俺は打たれる気がしないね。三振の過剰摂取状態。気持ち良すぎる」


 「体馬鹿になったりしてない? 球速も上がってきてるから、ペース配分も心配なんだけど」


 「かなりリラックスして投げれてるから大丈夫だと思うけど。三振というお薬がきれたらどうなるかが分からん。今の所向こうからお薬を提供してくれてるからあれだけど、後半戦は色々対策練ってくるだろうし」


 だから早く先制点をお願いしたいね。

 じゃあもっと大胆な配球も出来るようになるんだから。




 ☆★☆★☆★


 「なんやなんや。豹馬の野郎、絶好調やないか」


 念願の豹馬との投げ合い。

 中学の頃からどちらが上なのか、外野が散々言い争っていた。

 ここまではなんとか互角といった所だが。


 「正直、向こうの方が上やな。2巡目に入ってギア上がってるように見えるし。こっちは結構いっぱいいっぱいやっちゅうねん」


 これを言ってしまえばおしまいだが、打線の厚みが違いすぎる。

 レオンは言わずもがな、この回先頭の雨宮は塁に出したら厄介だし、后はケースバッティングも上手いし普通に打てる。


 「で、あの大浦とかいう奴。バグかなんかか? この大会に限ったらレオン君より怖いわ」


 前の打席では、ショート正面のライナーで抑えれたが、自分の決め球であるシンカーを初見で完璧に捉えられていた。

 岸田はランナーを溜めていなければどうとでもなると思っているが大浦はやばい。


 「はぁ。僕も龍宮行けば良かったかな。でもそうすると豹馬とは投げ合えへんかったやろうし。この打線が羨ましいわー」


 三高打線も決して悪くはない。

 だが、龍宮と比べると見劣りしてしまう。


 変則スリークォーターのサウスポーと右投げサブマリンの戦い。

 そんな風に煽られて、中学生の頃から対抗意識を燃やしてきたが、現実は中々厳しい。


 「これで来年とかは更に力つけてくるんやろな。豹馬があれ以上レベルアップしたら手つけられへんで。下手したらこの秋勝っとかんと、もう甲子園行けへんかも知れん」


 豹馬と投げ合うために、大阪から東京に来たが早まったか。

 甲子園で投げ合えば良かったんじゃないかと、今さら後悔する霊山。

 

 試合は四回裏に進む。


 

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