閑話 怪我から復活した男
「よしっ!」
パソコンで合格者番号を確認して、ガッツポーズする一人の少年。今日は志望校の合格発表の日だったのだ。
「あら? 受かったのね?」
「うん! これであの人と野球が出来るよ!」
「良かったわね。一時は落ち込み過ぎてどうなるかと思ったけど…。今日はお祝いにしなきゃね」
「ありがとう! 練習してくる!!」
後ろで見ていた母親と一緒に喜びもそこそこに、早速外へ飛び出していく少年。鈍った体を少しでも鍛えないといけないのだ。
「全く。落ち着きがないのは父親似かしらね」
母親の呆れた声は少年には聞こえていなかった。
「よしよし。思った通りに体が動くぞ!」
中学3年の春。
練習中に膝の靭帯を断裂してしまい、全治七ヶ月。そこから必死のリハビリでなんとか体を戻してきた。
中学2年の時点で、スカウトされて内定していた学校も怪我をした事で話は無かった事に。
絶望して野球を辞めようかとも考えていた。
しかし、今まで野球しかやった事が無かったので、他にする事がなく。惰性でリハビリをしていた頃に、なんとなく近くでやっていた球場で見た一つの試合に少年は心を動かされた。
龍宮高校対関東一高
この試合は後に大炎上する程審判の判定が露骨に贔屓されていた。
しかし先発の龍宮高校の先発は判定なんて関係ないとばかりに実力で相手打者をねじ伏せていった。
判定のせいで四球は多かったものの、七回を参考ノーヒットノーラン。
あの圧倒的なピッチングに惚れたと言ってもいい。
その日から少年は真剣にリハビリに励む事ができた。決して出来が良くない頭だったが、必死に勉強した。辛いリハビリもなんとか耐え抜いた。
全てはあの人と一緒に野球がやりたかったから。
そして、その努力の甲斐が実って、龍宮高校に一般で合格する事が出来た。
龍宮高校にはスポーツ科もあるが、ある一定以上の身体能力がないと振るい落とされる。
試験の日がリハビリ明けですぐだった事もあり、とても合格基準を満たせてるとは思わず、なんとか一般試験で合格した訳だ。
「でも全盛期には程遠いな。野球も一年近くやってないし。早く勘を戻さないと」
豹馬に憧れているが、ポジションは投手ではない。なので、素振りや父に頼んでノックを打ってもらったりと、最低限の事しか出来ていない。
「練習相手が欲しいなぁ」
家の前で少しぼやきながらも、染み込ませるように素振りを繰り返す。
父は仕事があるので、日中は一人で練習するしかない。せめてキャッチボールの相手が欲しい所だ。
しかし、そう都合よく相手が現れるわけでもない。少年は野球が出来る喜びを噛み締めながらも、センバツから帰ってくる龍宮高校のメンバーを待った。
帰ってきたらすぐに練習参加させてもらおうと思いつつ。
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閑話しゅーりょー。
まぁ、甲子園後の動向と新戦力のちょっとした紹介みたいな感じですね。これからの活躍に期待しましょう。
因みに、この話は作者の実話も混ざっています。
作者は野球じゃなくてバスケでしたがwww
あ、作者はドラマチックな展開もなく、怪我で高校の内定が取り消されるとすぐにバスケは辞めましたw
というより、リハビリが地獄すぎてですね…
完全に元通りにもなりませんでしたし。
懐かしい青春時代です。
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