第271話 VS三高1


 じゃんけんの結果、先攻は三高。

 まあ、これに関してはどっちでも良い。


 先攻でサクッと先制点を取って試合を有利に進めたいけど、後攻も後攻で悪くない。



 1回表。

 先頭バッターは柳生。

 劣化版白馬君と思ってくれたら良い。流石にあの人ほどのバットコントロールはないけど、選球眼も良くていやらしい1番バッターだ。


 初球。

 アウトコースにスプリット。

 いつもとは違う入り方に柳生は空振り。

 ちょびっとびっくりした様な顔をしてるな。


 2球目はインハイにストレート。

 3球目はインローにストレート。

 これは両方外れてツーボールワンストライク。


 「際どいけど、しっかり見極められてるな」


 「振ってもおかしくないコースだと思ったけどね」


 やはり優秀。厄介なバッターだぜ。


 4球目。

 アウトローへのスライダー。

 柳生はこれをバットに上手く合わせたものの、サード正面のゴロでワンアウト。


 「よしよし。まずは先頭をしっかり抑えたな」


 「柳生は塁に出しても面倒だから、これは大きいよ」


 面倒な柳生をスパッと抑えてワンアウト。

 そして続く2番から三振を奪って、ツーアウトランナー無し。


 そして二人目の要注意人物である砥川さんを迎える。三高はどのバッターも優秀だけど、特に厄介なのが柳生と砥川さんだ。


 「ランナー無しでこれたんだ。ここは大胆なリードもありだぞ」


 初球。

 インローへスライダーから。

 バッターにぶつかるような軌道から、ストライクゾーンに入っていく。

 初見なら腰が引けてもおかしくない。


 実際弾呉三兄弟ですら、キャプテンのスライダーには手を焼いていた。

 しかし砥川さんは、しっかりと見てスイング。


 打球はレフト前に転がっていった。


 「上手いなぁ。綺麗に腕を畳んでコンパクトに振り抜いていった」


 「豹馬に打撃評論されても頭に入ってこないよ」


 失礼な奴め。

 金子君も最近当たりが強くなってきたね?

 自分はちょっと打てるからってさ。


 俺は打てないけど、理論とかは完璧なんだぞ? なんたって、幼少期は父さんから指導されてたぐらいなんだ。

 結構早い段階で匙を投げられたけどね。


 なんで分かってるのに、体はその通りに動いてくれないんだろ。ほんと、ピッチャーの才能があって良かったなぁ。




 それはさておき、ツーアウトランナー一塁。迎えるは4番。

 要注意人物に挙げてる訳じゃないけど、名門で超強豪校の4番を任せてる人だ。決して油断できる相手ではない。


 しかしキャプテンとタイガは冷静に投げていき、結局5球目でファーストフライに打ち取って1回表が終了。ランナーは出したものの、悪くない立ち上がりと言えるだろう。


 「どうですか?」


 「ヒットは打たれちゃったけど、感触は悪くないね。あれは相手が上手かったって素直に切り替えるよ」


 うむ。キャプテンも調子は悪くない様子。

 これならそう簡単に点を取られるって事はなさそうだ。


 「なら龍宮自慢の打撃陣があの関西弁野郎を攻略するだけだな」


 頼むぜみんな。

 残念ながらそっち方面で俺はお役に立てませんが。精一杯応援はさせてもらいます。


 「1巡目はじっくり見て、後半勝負ってのもありかもな」


 いきなりあのアンダースローを攻略するってのは厳しいかもしれん。

 ムカつく野郎だけど、その実力は一級品だ。

 ある程度の割り切りは必要なんじゃないかなと思います。

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