第272話 VS三高2


 「むーかーつーくー!」


 「どうどう」


 1番のウル、2番のタイガが凡退した。

 ウルはもっと粘る気でいたみたいだけど、マリンボールだか、クレッセントムーンだか知らないが、霊山の気持ち悪いシンカーに三振してしまった。


 その時の霊山のドヤ顔がムカついたらしい。分かるぞ。あいつの顔ムカつくよな。

 え? 俺のドヤ顔の方がうざい? それは褒め言葉ですよ。


 そして3番のレオン。

 現在カウントはツーボールツーストライク。

 直前に投げたシンカーで仕留めるつもりだったみたいだが、レオンはバットに掠らせてファールでなんとか逃げた。


 あのレオンが掠らせる事しか出来なかったのを驚くべきか、あのシンカーに掠らせた事に驚くべきか。


 「そういえば大浦って秋の大会で霊山のシンカーを打ってるよな?」


 「本人が言ってたけど、あの時のシンカーとは全然別モノすぎて参考にならないみたいだよ」


 現在ネクストで霊山のピッチングをガン見してる大浦。やっぱりそう上手い話はないか。大浦があのシンカーを得意にしてるなら話は早かったんだけど。


 そうこうしてるとカウントはスリーボールツーストライク。

 レオンは釣り球の高めのストレートを冷静に見極めてフルカウントに持ち込んだ。


 「ここは是が非でも出塁して欲しいところ。三者凡退で終わるか、そうじゃないかは精神的なダメージが違う」


 「俺ならシンカーを要求するかなぁ」


 だろうな。俺でもそうする。

 ってか、レオンを打ち取るならそれしかないだろ。


 そして投げられたボールは真ん中低めへ。


 「はぁ?」


 「うわぁ」


 レオンは片膝をついて三振した。

 非常に珍しい光景ですね、はい。


 「チェンジアップ?」


 「だろうね。ここにきて新球種かー」


 今までの霊山の変化球はカーブ、スライダー、シンカーだった。

 が、ここにきて新しくチェンジアップ。


 「この日の為に隠してたな」


 「厄介だねぇ」


 付け焼き刃じゃない。

 しっかりブレーキの効いた滅茶苦茶良いボールだった。付け焼き刃だったら、レオンは頭にない球でも最低カットぐらいは出来る筈だ。それが膝をついて三振。


 これは非常にだるいですよ。


 「レオンを抑えるってのは大言壮語じゃなかったって事か」


 霊山め。

 しっかり準備してきてるじゃないか。


 「レオンさん殺気が出てますよ。抑えて下さい」


 「屈辱だ」


 明らかにレオンさんは怒ってらっしゃる。

 確かにあの三振の仕方はキツいだろうけども。ここは切り替えてくだせぇ。


 「でも初回に見せたのはどうなんだろうな。ここぞって時に投げた方が良かったんじゃね?」


 「そうとも言えん。あのストレートとシンカーに、チェンジアップを混ぜられるとかなり面倒だ。投げてこなくても、こっちは嫌でも意識させられるからな」


 「ふーむ。なるほどねぇ」


 これはマジで投手戦になる可能性があるな。キャプテンには気合を入れてもらわねば。ペース配分とか気にせずに全力で抑えにいってほしい。


 後ろには俺と金子が控えてますからな。

 流石にこの試合でミズチは厳しいだろうし。


 輝夜さんに良いとこ見せるチャンスですよ。

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