第277話 VS三高7
龍宮高校選手の交代をお知らせしまーす。
ピッチャー三井君に代わりまして、三波君。ピッチャー三井君に代わりまして、三波君。
はい。という事で自分で脳内アナウンスをして三波豹馬君が八回表のマウンドに上がりましたよって。
三高は5番からの打順。
俺が点を取られなければ2イニングで終わる。先発の時みたいに、ペース配分を考える必要はない。最初から全力で油断せずに抑えていきたい。
「緊張はしてないみたいだね」
「俺が野球関連で緊張する事は滅多にない」
投球練習が終わって、タイガがマウンドにやってきた。俺が緊張してる気になったんだろう。だが、俺は自分の練習に絶対の自信がある。
転生する前に死後の世界で文字通り時間を忘れる程練習したし、生まれ変わってからも野球の練習に関しては手を抜いた事はない。
レオンや白馬君みたいに、ちょっとバグってる人間とも出会ったが、それでも自信しかない。
「じゃあいつも通りだね」
「ああ。いつも通りだ」
いつも通り投げていつも通りズバズバと三振を奪う。それが俺の仕事だ。
むしろ俺はタイガの方が少し心配だね。大舞台の決勝とかの試合が終わりに近付くといつも緊張してるもん。
タイガは少し笑いながらマウンドから降りて行った。俺はそれを見てから龍宮サイドの観客席を見る。
ベンチに入れなかった先輩、同期、後輩。
保護者の方々もたくさん応援に来てくれてるし、吹奏楽部にチアのみんな。
父さん母さんの姿もあるし、輝夜さんや、掲示板で追っかけを名乗ってる京極さん。
エンジェルの神奈にエンジェルの渚ちゃん。
「気合いが入る」
キャプテンから繋いでもらったバトン。
俺がおじゃんにする訳にはいかない。
先頭の5番をストレート三つで三振に。
6番をキャッチャーファールフライ。
7番をツーシームで三振。
僅か8球で八回表を終了させた。
特に最後投げたツーシームは146キロを計測。絶好調である。
「この調子でバッティングの方も」
そう調子に乗りたい所だけど、最近の俺は分をわきまえている。8番の速水がセカンドゴロに倒れて、送りバントをする事もない。
それならばと、バッターボックスの少し外の方に立って、ほぼ打撃放棄である。
霊山は一応警戒してたけど、俺に霊山のボールが打てる訳がない。それなら今回は打撃は放棄してピッチングに集中させてもらいますよ。
これが負けてたり、同点だったりしたらまた話は別だけどさ。万が一バットに当たる可能性があるから、とりあえず振るよ。
結果はほぼ変わらんがな。
俺はしっかり三振で倒れて、ウルは8球粘ったもののセンターフライ。
柳生のランニングキャッチに阻まれて八回裏も終了した。
そして運命の九回表。
三高は8番からの打順で代打を出してきた。
この大会でも何度か代打で登場して結果を残してる三年生。
かなり気合が入ってるのは見たら分かる。
ここで負けたら三年生は引退。意地でも出塁するって感じだろう。バッターボックスギリギリに立って、当たってでも出塁してやるって気概が感じられる。
が、残念ながら俺は死球を蛇蝎の如く嫌っていて、ぶつけない為にコントロールを磨いてきた男。
そんな脅しには屈しませんぜと、インコースに二球続けて投げてやった。
敢えてインコースを誘ってる可能性があるかと、初球をストレート。2球目にスラッターを投げた。
初球は動かなかったが、やはり2球目は動いてきた。足を引いて打ってきたが、手元で曲がる俺のスラッターにドン詰まり。
ピッチャーゴロを俺が捌いてワンアウトだ。
そして9番。
ここには代打はない。
霊山がそのままバッターボックスに入る。
万が一同点に追い付いた場合の事を考えてるんだろう。今の三高で龍宮打線を抑えれるのはこいつだけだしな。
霊山もかなり気合いが入ってる。
いつものちゃらけた雰囲気は一切なく、鋭い眼光で俺を睨みつけるようにして構えている。
出来れば最初から投げ合って白黒つけてやりたかったけどな。
それは来年に持ち越しか秋に持ち越しという事で。
今回は俺達が勝ちを貰うぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます