第276話 VS三高6
レオンの打った打球は神宮のライトスタンド上段まで飛んで行った。
打った瞬間それと分かる当たり。
「カッコ良すぎるだろ。主人公かよ」
レオンは打った瞬間、キャプテンに向かってガッツポーズをしていた。男前すぎますよ。
霊山はマウンド上で半笑いになってる。
確かに、笑うしか出来ないよねぇ。
ここまでほぼ完璧に抑えてきたのに、痛恨の一発だ。
「チェンジアップを狙ってたの?」
「当たり前だ。あの打席は低めのチェンジアップしか眼中になかった。投げて来なかったらまた俺の負けだったな。だが、あのチェンジアップだけはどうしても打っておきたかった。膝をついて三振なんて屈辱だったからな。二打席目で高めを叩いておいてよかった。あれで高めをなるべく避けてくれたからな」
ふむぅ。なるほど。
あんなクソボールに手を出したのはそういう意図があったのか。
「でもチェンジアップ一本に絞るって中々肝が据わってんな」
「チェンジアップがこなくても次の打席があると思ってたからな。キャプテンはこの回までで次からはパンが投げるんだろう? 最近のお前が点を取られるとは思えん。0行進で進んで次の打席もあると分かってるならこの打席で賭けをしても良いかと思ってな」
「トゥンク」
あらやだ、レオン君ったら。
そんなに俺の事を信頼してくれてたのね。
そんな事を言われちゃ、豹馬君はやる気になっちゃいますわよ。
「渚の前でお前が無様な真似をするとは思えんからな」
「それはそう」
そんなこんなでレオンと喋ってると、大浦と隼人がヒットで出塁。ノーアウト一.二塁のチャンスになって、これは霊山の集中が切れたかと思ったんだけど。
清水先輩が打った打球はサード強襲のゴロ。これをサードの砥川さんが気合いで捕球して、三塁ベースを踏んで、二塁に送球して、二塁もアウト。一塁はギリギリセーフでトリプルプレーは免れたものの、7番の一二三少年が三振に倒れて、七回裏が終了した。
☆★☆★☆★
「くそったれが!!」
「落ち着け伊集院。まだ試合は終わってないぞ」
「すんません」
僕は叩き付けたグローブを拾って、声を掛けてきた砥川先輩に謝る。
先輩に声を掛けられて少しは落ち着いてきたけど、それでもやっぱ悔しい。
レオンに打たれたチェンジアップ。
コースは悪くなかった。出来れば後ボール一個分低く投げたかったけどな。
「レオンは甘くないなぁ」
その一個分を見逃してくれへんかった。
完璧に捉えられてえげつない飛距離のホームランを打たれてもーた。木製バットやぞ? プロでもあそこまで飛ばすのは滅多にあらへんで。
「豹馬が出てきたか」
先発の三井さんに代わって豹馬が出てきた。投球練習を見る限り調子は良さそうや。
うちの打線が豹馬から点を取れるんやろうか。
出来れば三井さんが投げてる時に点を取っておきたかった。
三井さんもええピッチャーやけど、それでも豹馬から点を取るよりは簡単やったはず。
それでも諦める訳にはいかへん。
まだ攻撃は二回ある。なんとしても豹馬は攻略せんと。僕はここのみんなと甲子園に行きたいんや。
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