第275話 VS三高5


 試合は七回表。

 ツーアウト一.三塁のピンチである。

 キャプテンは9番の霊山は三振で抑えたものの、1番の柳生にヒットを打たれて、二番が送りバント。3番の砥川さんにレフト前ヒットを打たれて、あわや先制点かと思われたところで、大浦のレーザービームで本塁帰還を阻止。


 ピンチで4番を迎えている。


 「豹馬。ここで打たれるか、抑えても次の回からいくで」


 「いえっさー」


 キャプテンの球数は今で120球ぐらい。

 打たれたヒットはこの回の2本と、初回の1本だけで四球もなし。素晴らしいピッチングをしてると言えるだろう。


 が、この回からボールがちょっと浮いている。それを柳生や砥川さんに叩かれているんだ。甲子園出場を懸けた大事な一戦。プレッシャーもあって、かなり神経をすり減らしてる事だろう。


 そんな中でもここまで文句なしのピッチングをしてきたのは本当に素晴らしいと思う。

 後はなんとかこの回を抑えて戻ってきてほしい。そしたら後は俺ちゃんがバシッとやってやりますよ。


 そしてそんな俺の、いや、龍宮ナイン一同の願いが通じたのか、キャプテンは4番をショートフライに打ち取って、この回も0に抑えて帰ってきた。派手なガッツポーズが画になりますね。


 「ナイスピッチングです」


 「ふぅ。ありがと。砥川にヒットを打たれた時は流石にちょっと肝を冷やしたけどね。大浦に助けられたよ。大浦、ありがとう」


 「バットで援護出来てないっすからね。守備ぐらい貢献しないとっす。次こそは打ってみせますっすけどね」


 実際大浦のレーザービームは凄かった。

 ピッチャーも出来るだけあって、地肩が良いんだよね。


 そして七回裏。

 この回はレオンからの打順だ。

 そろそろ点を取ってくれないと、高校No.1打線の名が廃るぜ。これだけ抑えてる霊山が凄いって事なのかもしれんが。


 霊山もタイガにヒットを打たれた以外は、一二三少年にヒットを一本打たれただけだ。

 綺麗にシンカーを打ち返しててびっくりした。どっちかというと変化球が得意だからな。霊山と相性が良いのかもしれん。


 霊山もここまで100球を超えている。

 そろそろコントロールミスがあっても良いんじゃないかと思うが、ここまでそのミスらしいミスはない。


 しかしここで迎えるのはレオン。

 さっきの打席は高めのボール球をフェンス手前まで運んだ。あれを見て今回はどういう風にリードをしてくるか気になる。


 そして初球。

 霊山はアウトコースのストライクからボールになるシンカーから入ってきた。

 が、レオンはこれに微動だにせず見逃してボール。


 2球目。

 アウトコースへボールからストライクゾーンを掠めるようなカーブ。

 審判によっては手を上げてくれないボールだが、これはしっかりストライク。

 レオンはこれにも動かなかった。


 「うわぁ。霊山のプレッシャーえぐそう。あの状態のレオンってマジで怖いんだよな」


 思わず敵の霊山に同情してしまった。

 それぐらい今のレオンには威圧感がある。間違いなく威圧感青特持ちだね。


 3球目。

 インハイへのストレート。

 これはボール球で仰け反らせる兼、高めへの目付け目的で投げたんだろう。さっきあれだけの大飛球を打たれたのもあって、結構大きく外してる。高めに投げるのは怖いだろうなぁ。


 そしてこれにもレオンは動かない。

 顔付近とまではいかないが、それでもそこ辺りを通ったボールなのにピクリとも動かない。霊山も中々苦しそうな表情だ。


 4球目。

 真ん中低め。どちらかというと、アウトコースよりのチェンジアップ。

 レオンはこれに反応した。




 カンッと木製バットの乾いた音が聞こえて、打球はライトスタンドに向かって飛んで行った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る