第278話 二度目の舞台へ


 ☆★☆★☆★


 代打の先輩が倒れてワンアウト。

 9番の僕やけど、監督は代打を出さんと送り出してくれた。九回裏があった場合の事を考えての事やろう。


 僕のバッティングは高く見積もっても中の下や。正直、豹馬のボールを打てるとは思えん。


 それでも諦める訳にはいかへん。

 なんとしてでも出塁してみせる。


 初球に投げられたのはアウトローへのストレート。当たれと思ってスイングしたものの、空振り。


 球速掲示板を見ると155キロでとった。

 てか、今日豹馬が投げたストレートは全部155キロや。どないなってんねん。

 平均球速155キロってメジャーやないか。


 2球目。

 アウトコース高めへのストレート。

 これにもバットが当たらず空振り。

 やっぱり球速は155キロや。勘弁してくれよ、ほんまに。


 三高にも去年160キロを投げる先輩はおったけど、常時155キロは流石にキツい。

 これはバットの始動を早くせんと、当てるのも困難やで。


 3球目。

 ストレートに振り負けないようにと、かなり早めにスイングを開始したんやけど。

 ボールがこーへん。チェンジアップや。


 なんとかバットに当てようと思ったけど、ほれも無理で。結局膝をついて三振になってもーた。球速は129キロ。

 ブレーキ効きすぎやで。ストレートしか意識してなかった僕が悪いけど、まんまとやられたわ。


 豹馬は、僕もそうやけど、ピッチャー特有のストレートで三振を奪いたいみたいな欲がないからなぁ。

 プライドは高いくせに変な所で現実主義というか。


 「でっかい男やなぁ」


 なんも出来ずに三振で倒れてもーた。

 後は後続に託すしかないわ。

 頼むで、柳生。



 ☆★☆★☆★


 わはははは!

 レオンの仇はしっかり取ったぞ!

 同じような形で三振を奪ってやったわ!


 まあ、たまたまなんだけど。

 なんか霊山がゴリゴリのストレート待ちな気配を漂わせてたから。それならチェンジアップ投げるよねって。


 ストレートでカッコよくて三振を奪おうが、変化球で三振を奪おうが三振は三振。

 俺の勝ちって事でしくよろでーす。


 そして打順はトップに戻って1番の柳生。

 九回表ツーアウト。甲子園まで後一人。

 ここで要注意人物の柳生とは。最後の関門ですな。


 「ふぅ」


 ロージンをてしてしして、タイガのサインに頷く。


 初球にアウトコースへナックルカーブ。

 これは当てられてファール。


 2球目。

 またもやアウトコースへナックルカーブ。

 これは見逃してストライク。

 2球続けてくると思ってなかったんだろう。完全に頭になかった様な顔をしていた。


 3球目。

 アウトコース高めのストレート。

 これに柳生は反応してバットを出したものの、途中で止まる。

 タイガはスイングをアピールするが、判定はボール。


 正直今ので決めたかったけど、仕方ない。

 相手の選球眼が素晴らしかった。

 それならば次こそは決める。


 4球目。

 インコースにフロントドアのスイーパー。

 左打者の柳生はまたアウトコースを予想してたのか、若干踏み込んでいた。


 しかし、背中から来るようなスイーパーに大きく仰け反る。


 「ストライク! バッターアウト!」


 残念。派手に避けてたけど、ストライクなんです。



 俺が三振を取った途端ベンチから龍宮の選手が走ってくる。

 外野からも内野もみんなでマウンドに集まりわっしょいわっしょいだ。


 「ふははははー! 甲子園じゃー!」


 今大会は特に活躍してないけど、嬉しいもんは嬉しい。まだまだみんなと夏は続けられるって事だからね。


 「やりましたね。キャプテン」


 「ああ。嬉しいよ」


 既に半泣きのキャプテン。

 秋は甲子園決定の瞬間の輪の中に入れなかったからなぁ。


 なにわともあれ、龍宮高校。

 夏の甲子園出場です。

 

 

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