第100話 神宮大会


 秋季東京大会から約1週間後。

 一応全国大会の明治神宮野球大会の日がやってきた。


 「なんだろうな。全国大会ってのは間違いじゃないのにやる気出ない」


 「どこの高校もそんな感じでしょ」


 俺はあの決勝で若干燃え尽き症候群みたいになっていて、いまいちモチベーションが上がらない。


 「って事だから頼むぞ金子」


 「せっかく色々な高校と戦えるのに勿体なくない?」


 そう言われましてもね。

 なんか今年はもうやり切った感があるんだよね。

 なので、俺は神宮大会で投げる予定はありません。

 金子がメインで、大浦も投げるかもねって感じだ。

 キャプテンはまだリハビリ始めたばっかりだし。

 ……冬は地獄だろうなぁ。


 初戦の相手は中国地区代表の江陵高校。

 言わずと知れた名門ですね。


 「まぁ、金子が三失点以内にまとめたらうちの打線がなんとかしてくれるさ」


 「簡単に言ってくれるね。俺みたいな凡人には荷が重いよ」


 凡人? ……凡人?

 こいつ、自己評価低すぎるだろ。

 1年の時点でMAX137キロ投げれて、多彩なカーブを投げ分けれるんだぞ?

 普通にエースクラスなんだが?


 「タイガ、あいつおかしいぞ」


 「比較対象が、パンとキャプテンだよ? そうなってもおかしくないと思うね」


 「いや、高卒は厳しいかも知れないけど、大学で体が本格化したらプロも全然ありえるレベルになると思うんだけど」


 「そう言ってあげたら? 本気にされないかもだけど」


 むむむっ。どうしたもんか。

 嫌味とかじゃなく、本当に良い投手だと思ってるんだけどな。


 「良し。この大会は、金子に自信をつけさせる大会にしよう。タイガのリードにかかってる。頼んだぞ!」


 「責任重大だぁ」


 都合良く、向こうから強豪校がやってくるんだ。

 有効活用しないとな。

 あんまりやる気のない大会だったけど、面白くなってきた。





 「ほな、昨日のミーティングでも言った通り、気を付けるのはエースと四番や。エースは左の本格派。まぁ、サウスポーになった三井みたいな選手やな。四番はチャンスに強い強打者。チャンス以外でもしっかり打ってくる隼人やと思えばええ」


 チャンス以外でも打ってくる隼人はもうレオンなんだよ。

 流石にそこまでバケモノしてないらしいけど。


 サウスポーのエースはコントロールがあんまり良くなさそうだけど、それが的を絞らせない良い感じになってる。


 「正直、三高よりは強くないやろ。お前らが普通にやれば普通に勝てる相手や」


 今日は平日だから、応援も少ないのよね。

 せっかくのホームアドバンテージを生かせないのは残念。


 「やる気の無い奴もおるやろ。豹馬みたいに。まあそれもしゃーないと思うけど。それでも各々何か目標を見つけて課題を持って試合にあたるように。しょーもない怪我だけはすんなよ」


 すみませんね、やる気の無い奴で。

 正直、もう冬に向けて練習を開始したいと言いますか。

 この大きくなった体を更に使いこなす為に、みっちりと練習したいんだよね。

 甲子園では一回り大きくなった三波豹馬をお披露目したい。

 全国の野球ファンに衝撃を与えるぐらいBIGな投球をしたいね。

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