第193話 一二三少年の悩み
「後輩と交流の場を設けたのは、勿論みんなが豹馬君と話したがってたのもあるんですけど、本命は一二三なんですよね」
「ん? そうなの? 一二三少年とは良い感じに交流出来てると思ってたんだけど」
だって俺の事をよいしょしてくれるから。
もしかして良い感じと思ってたのは俺の勘違いだったり? だったら豹馬君は少しショックなんだけど。
「いえ、その、ちょっと厚かましいお願いになるので…。流石に仲良くさせてもらってるとはいえ、ちょっと尻込みしてしまうと言いますか…」
「ふむ? 俺に出来る事なら協力するけど」
「流石豹馬君! 後輩との交流の場を開く為の見返りをお願いしましたよね? これがお願いなんです! 一二三のお願いを聞いてやって下さい!」
そんな大事なの? あの、俺に出来る事だよね? 流石に女性を紹介してくれとかは無理よ? 後、バッティングのアドバイスとか。むしろ下手になっちゃうかも。
「実はですね--」
一二三少年は悩んでるみたいだった。
怪我のせいで長く野球から離れてたせいか、中々勘が戻らないらしい。
基礎体力や筋力はこれからの練習でなんとかなるにしても、この野球勘だけはどうにもならない。
昔は簡単に打てたのに、今はどこかしっくりこない状況が続いてると。
「うむ。バッティングのアドバイスは俺に聞かない方が良いんじゃないかな? 俺はそうは思ってないんだけど、どうやら俺のバッティングはクソみたいだし」
この前ツーベース打ったのにね。
たかが長打一本で調子に乗るなって話だけど。
……熱も出たし。
「いえ! 俺もそんな馬鹿な事はしませんよ! 三波先輩にお願いしたいのは練習終わりに少しバッピをやって頂けないかと思いまして。一流のボールを見続けて、練習きたら野球勘も戻ってくるんじゃないかと」
ほう! 一流のボールとな?
分かってるじゃないか、一二三少年。
そう! 俺のボールは一流なのです!!
そういうお願いならお任せあれ!
ブルペンで投げる球数を減らして、一二三少年のバッピになろうじゃないか!!
その言葉に免じて、馬鹿な事と言った事は見逃そう。俺にバッティングの事を聞くのは馬鹿な事なのかね? その通りだけども。面と向かって言われると腹が立ちますよ?
「ミズチじゃダメだったの?」
「俺もたまに付き合ってますよ。居残り練習はあんまり推奨されてませんけどね」
まぁ、基礎練とかは割と追い込むからなぁ。
一年生は特に。とにかく高校野球を戦い抜く体力が必要だし。母さんが練習量を調整してるから、それ以上やると怪我に繋がりかねない。
「まぁ、俺はブルペンで投げる量を調整するだけだし、一二三少年も一球一球じっくり打っていくならそんなに負担にはならんか」
よし! では早速明日から一二三少年の居残り練習に付き合おうではないか!
どうせなら金子とキャプテンも誘おう。
色んなボールを見れた方が良いだろうしね。
他にも居残り練習をしたい人が居たら誘っておくがよろし。
「一応母さんと父さんにも声を掛けとくか」
怪我だけには気を付けませんと。
その判断は二人にお願いしたい。
俺達球児はテンション上がってくると、自分の身体の異変に気付かない事もあるしね。
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