第134話 翌日の会話
「お兄ちゃん!」
「おお! マイエンジェル!!」
完全試合をした翌日。
軽くランニングとキャッチボールだけして、俺の今日の練習は終わりだ。
借りてる練習場の隅っこで柔軟をしていると、家族のみんながやって来た。
といっても、祖父母は大阪を観光しに行ってるらしいが。妹は観光に行かずにこっちに来てくれたらしい。これが純粋な兄弟愛だったら良かったんだけどね。
「ウル君は?」
「あっちで元気に走り回ってる」
「じゃあ私はあっちの練習見にいこーっと」
ふぬぬぬぬ。やはり目当てはウルか。
目をキラキラさせよってからに。
「豹馬、昨日はやったな」
「やってやったぜ! 狙ってたけど、まさか本当に出来るとは思ってなかった」
妹の神奈がウルの方に走って行くのを複雑そうに見ていた父さんが話しかけていた。
母さんも神奈に着いていった。
「あ、太晴君も。わざわざ甲子園まで来てくれてありがとうございます」
「いやいや、昨日は本当に良い試合を見せてもらったよ! これだけでもわざわざ関西まで来た甲斐があるね!」
京極太晴君。掲示板で偶に出てくる俺の追っかけを自称している人だ。
俺のファン一号でもある。
秋の終わり頃に父さんが連れて来て仲良くなって、それからもちょくちょくとお食事処で一緒にご飯を食べたりと、仲良くさせてもらっている。
「それで、その後ろの可愛い人は? 太晴君の彼女?」
「そうだよ。せっかくだから、関西の観光も兼ねて一緒に来たんだ」
ぺこりと頭を下げてきたので、俺も会釈しておく。なんか庇護欲を掻き立てる小動物系の可愛らしい女性だ。
流石イケメン。彼女も一流ってか。
しかも、付き合い始めたのは中学一年から。
幼馴染だってよ。どこのギャルゲーなんだ。
「せっかく彼女と来てるだったら、早く遊びに行ってあげなよ」
「そうなんだけどね。完全試合達成のおめでとうは直接言いたかったしさ。この後でゆっくり回ってくるよ」
ほあー。性格までイケメンか。
まだ短い付き合いだけど、欠点が見当たらないんだよな、この人。
……人の欠点をなんとか探そうとしてるあたり、俺は汚れちまってるな。
「それで、豹馬。体は大丈夫なのか? 念の為に母さんを連れてきたが」
「完投したわりには肩が軽いね。次の試合は先発じゃないだろうし、このまましっかりケアすれば問題ないと思う」
「そうか。それなら良いんだが。怪我だけには注意しろよ」
そう言って母さんの方へ歩いていく父さん。
さっきからチラチラと神奈の方を見ていたし、気になっていたんだろう。
干渉しすぎると嫌われちゃうよ? 俺が言えた事ではないんだけど。
言われた通り、怪我には注意してる。
前世での苦痛を今世でも味わいたくないからね。
管理者さんに怪我しにくい体を貰ってる筈だし、小さい頃から細心の注意を払ってるから、勤続疲労もない。
「じゃあ、俺達もそろそろ行くね。次も頑張って」
「ありがとう」
太晴君も彼女手を繋いで観光に向かった。
ちっ。爆発しろってんだ。
いくら、仲が良くてもリア充を見ると負のオーラが出てきてしまうぜ。
「渚ちゃんは、モデルのお仕事で来れないからなぁ」
昨日、お祝いのメッセージは来たんだが。
やっぱり直接会いたいよね。
「やはり、そろそろ告白すべきか。いや、もう少し段階を踏んでから? これ以上に段階とかあるのだろうか」
前世ではそれなりにお付き合いした相手が居たはずなんだが。
転生してからちょっとチキンになってるな。
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