第55話 続・合宿


 合宿の朝は早い。

 昼間は昼寝と勉強にあてるため、朝は早めに起きて涼しいうちに練習している。


 「ふぁぁあ」


 時刻は朝の4時半。

 俺は目を擦りながら起き上がる。

 朝の練習は5時〜9時なのでわりとギリギリである。


 「おはろー!」


 大きい声でやたらと元気なウルに声を掛けられる。


 「はいはい、おはろー」


 俺は朝が弱い。

 というより、いつでも寝起きが良くない。

 寝るのが好きなので、アラームに起こされるとイライラするのだ。

 


 さてさて、朝ごはんを食べて練習開始。

 入念にウォーミングアップをしてからサーキットトレーニングへ。

 朝は主にサーキットと守備の練習。

 涼しい内にやらないとダレるしね。


 「くそ暇だな」


 俺とキャプテンは怪我してるのでやる事がない。

 いや、キャプテンは上半身で出来る事があるのでまだマシかもしれない。

 俺は肋骨にヒビが入ってるのでゴムボールを握って握力を鍛えるぐらいしかやる事がない。

 一応5日後に抜糸できる予定なのでそこからプールで歩くぐらいはできる様になるのだが。


 「ああー。眠い」


 昨日の練習が終わった後、面白い変化球はないもんかと、動画を漁りまくってたのがよくなかった。

 まぁ、そんな簡単にしっくりくるのなんてないよね。

 動画探したくらいで見つかるなら、みんな使ってるって話ですよ。


 「ジャイロボールもなぁ。あれサイド気味から投げたら簡単に投げれるんだけどねえ」


 抜けスラとも言われるジャイロボール。

 落ちながら伸びていく素晴らしいボール。

 使えるもんなら使いたいんだが、いかんせんコントロール出来ない。

 すっぽ抜けのスライダーだしね。

 すっぽ抜けをコントロール出来るかって事よ。

 俺には無理でした。


 「キャプテンは、新しい球種覚えたりしないんすか?」


 「チェンジアップを投げ始めたばっかりだからね。そんなすぐ次にはいけないよ」


 「あー、そうでしたね。俺も諦めて今ある球種を磨くかなー」


 よく考えたら俺は死後では投げまくってたけど、転生してからは怪我にビビってあまり投げ込んでいない。

 健康で怪我しにくい体にしてもらったのに怪我してるけど。

 シニアの全国大会では、発熱もありましたねえ。

 もしかして、管理者さんは特典を忘れたのかな?

 それとも特典が無かったらもっと酷い怪我してたりして。


 「ひぃーあっちー! 朝でも暑いもんは暑い」


 「お! お疲れさーん! こちら豹馬特製プロテインご用意してまーす!」


 ここだけの話。

 俺が作ったプロテインは大変評判が良い。

 ふっふっふっ。

 長年の研究で編み出した俺様の特殊配合は無敵である。

 市販の物とは違うのだよ!



 朝の練習が終わるとシャワーを浴びて仮眠。

 大体お昼頃まで寝て、そこから勉強。

 で、日が暮れたらまた練習。

 9日目までこの繰り返し。


 「あ、最終日は練習試合入れてるからね」


 言うの忘れてたぜい。


 「相手はどこなの?」


 「え? 聞く? お楽しみの方が良くない?」


 「いいから早く」


 「松美林」


 最終日は漆黒の白馬を擁する松美林との練習試合だ。

 

 

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