第128話 VS神町1


 2回戦当日。

 第三試合という事もあり、ゆっくり起きてから入念にウォーミングアップする。


 「よきかな。体は絶好調である」


 モチベーションもMAX。

 今日の豹馬君は一味違うね。




 「身体でけぇなー。ゴリラがいっぱいだ」


 「なによりも飛ばす事を考えてるチームだからね」


 試合前練習も終わり、まもなくプレイボール。

 相手ベンチを見てみると、ギラギラとした目であれを見ている。


 「良いね! やる気満々じゃん!」


 「舐めてかかってくる様な事は無さそうだね。脳筋の集まりみたいなチームだけど、情報収集もしっかりしてるみたい」


 もうスタメンも発表されて、俺が先発って分かってるからな。

 打撃偏重チームに俺のピッチングが通用するのか。今から楽しみだ。


 とはいえ、先攻は龍宮高校。

 サイレンが鳴り、プレイボール。


 1番のウルは、初球から積極的に打っていったがショートライナー。

 ちょっと球威に押され気味っぽい。


 「思ったよりも球が重い。コースは甘めだから、しっかり振り切れば捉えられなくもないかな」


 「言ってるそばから」


 タイガが3球目のストレートを捉えて、レフト前ヒット。そして迎えるはレオンである。


 レオンの名前がコールされて打席に入ると、甲子園は大歓声。

 TVでも放送されたし、木製バットでホームラン二本ってのはインパクトがあるからな。

 観客もほぼ満員だし、地鳴りの様な応援だ。


 「やっぱりホームランってのは、分かりやすい華だよなぁ。初戦で甲子園民の心をガッチリ掴んだみたいで」


 「こんな観衆の中、動じないレオンも凄いね」


 レオンは無表情で、ピッチャーと相対している。

 相手バッテリーは勝負を避ける事なく、積極的にインコースも攻めてきてるが、ゾーンには入っていない。


 ピクリとも動かないレオンに気押されたのか、4球目が若干甘く入る。

 それを見逃さず、レオンはバットを振り切った。


 「あー微妙に詰まったか」


 「金属なら入ってただろうね」


 それを言っちゃダメよ。木製バットで詰まってもフェンス直撃まで持っていく、高校生がおかしいんだ。

 それにしてもあいつ、スリーボールノーストライクからでも普通に打っていくな。

 一回戦でも打ってたし、狙ってるんだろう。

 大体はストライクを取りに甘く入ってくるからね。


 レオンのフェンス直撃のツーベースで、タイガが一塁から一気にホームまで帰って来て、先制。

 塁上にいるレオンは不満そうな顔をしてるが、一応ベンチに向かってガッツポーズをしている。


 尚もワンアウト二塁で4番の大浦。

 相手ピッチャーも一回戦でホームランを打っていたし、注意はしてたんだろう。

 しかし、身長に騙されたのか、真ん中付近に甘く入ってきたボールを見逃さず、左中間を真っ二つに割るツーベース。


 「流石、うちの打線だな。マジで相手ピッチャーが気の毒だ」


 俺も相手にしたくない。

 レオン、大浦、隼人の並びが極悪すぎる。


 そして、5番の隼人。

 一回戦は、ヒット一本に終わって不完全燃焼だったらしい。

 しかし、この打席は得点圏にランナーがいる。

 打点乞食がそれを取りこぼす訳もなく、インハイのボールを思いっ切り引っ張り、ポール直撃のツーランホームラン。


 「流石。得点圏にランナーがいる時の隼人はレオンよりやばいな」


 「通常の打席でもやってくれたらね…」


 そしたら、一気にレオンも食える程の打者になるんだけどな。

 まだまだ成長の余地はあるって事さ。


 続く清水先輩はセンターの深くまで飛ばしたが、外野が間に合いツーアウト。

 続く打者もファーストゴロに倒れて、一回表がようやく終わった。

 スコアは4-0。うちの打線も負けてないって所を存分に見せれただろう。


 「ってか、4点もリードを頂けるなんて。俺はなんて幸せ者なんでしょう。今日は勝ったな」


 「なんでそうやって、自分からフラグを立てていくの?」


 フラグ程度に俺がやられる訳なかろう。

 何故なら、今日の俺は絶好調だからだ。

 どんな理不尽もねじ伏せてやるぜ。


 俺はルンルン気分で、初の甲子園のマウンドに向かった。

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