第216話 VS木更津猫愛2
相手バッテリーも清水先輩の甲子園での活躍は知るところ。
かなり慎重に組み立ててきている。
ツーボールツーストライクの並行カウント。
ここまで清水先輩は変化球に一度空振りしてからは手を出していない。
果たして何を待っているのか。
「歩かせる前提のリードもありえるなぁ。次は一二三少年だからどうか分からんけど」
4番はこの大会当たっている一二三少年。
ランナーを置いて勝負はしたくないだろう。
滅茶苦茶割り切ってるバッテリーなら一二三少年も歩かせたりするんだろうけど。
5番は剛元だしね。
変化球を投げとけば安牌ってバレてるだろうし。
初回からそこまで逃げ腰じゃ苦労するのも事実だが。それに剛元は徐々に改善してきてるんだ。
何かのはずみでコツを掴む事だってあるかもしれない。
そんな事を考えていたら5球目が投げられた。
インハイへのストレート。
バッターが一番速く見えるコースだが、清水先輩は器用に腕を折り畳んで綺麗に捉えた。
「ふーむ。うちには木製でホームランを量産するバッターが多すぎるな」
レフトの中段まで飛んでいった打球をみて、思わず呆れた表情をしてしまう。
この人が6番に居る打線だぞ? 龍宮打線はマジでどうなってんだよ。
「完全に二代目ゴリラになりましたね!」
「やめろやめろ。まだまだ北條先輩には及ばんよ」
ダイヤモンドを一周して帰ってきた清水先輩に話しかけると、まだまだだと謙遜された。
そういえば北條先輩は元気でやってるかな。
六大リーグでは流石の北條先輩もいきなりレギュラーは取れないだろう。
大学野球は更に上下関係が厳しいって言うし。
俺は絶対に入りたくないね。
4番の一二三少年は良い当たりだったものの、ショートライナーに倒れて一回裏が終了。
先制点を奪取する事に成功。
今日のミズチの出来なら後2.3点取れればやっていけそうな気がするが、果たして。
そしてミズチはヒットを一本打たれたものの、後続を抑えてしっかり二回表も0で帰ってくる。
スライダーとシンカーが効いてるなぁ。
「スライダーのキレが上がって、何故かシンカーも調子が良くなったんですよね」
なんでだよ。全然投げ方違うじゃん。
まぁ、良い効果があったんなら別に良いけどさ。
「カーブも金子先輩のお陰で段々良くなってきましたし、後は平均球速を上げたいですね」
「そればっかりは地道なトレーニングが必要だわな」
焦らなくても良かろうて。
幸い龍宮は投手陣も豊富な人材で揃ってるので。
さてさて。二回裏。
注目の剛元。
前の試合では安打がなく、その前の試合も一本だけ。5番に座ってる人間としては物足りない数字だ。それは剛元自身が分かってる事だろうけど、監督がそれでも5番で使い続けるのは期待の表れなのか。ほんと、何かが噛み合ったら打ちそうなんだよな。
「んはー。いや、当たったんだし一歩前進?」
剛元はカーブを打ってサードフライ。
空振りしなかっただけ良いと思うべきか。
当てる為だけのスイングでも無かったしね。
しっかり自分のスイングは貫いている。
初めての試合は当てにいったスイングをした次の打席には代打を送られていたし、監督が見てるのはそういう部分なのかな。
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