第215話 VS木更津猫愛1


 準決勝の相手は木更津猫愛高校だ。

 千葉の強豪だな。

 まぁ、俺に出番はないんだが。


 「この試合に勝ったら次からは横浜スタジアムで試合出来るぞ。是非勝って欲しいもんだね」


 「プレッシャーかけてきますね」


 今日の先発、ミズチに聞こえる様に言う。

 今日は前回までのスタメンと少し違う。

 一塁に清水先輩が最初から出てるのだ。

 練習で掴んだ事を試させてやりたいと、輝夜さんが監督に進言してそういう事になった。


 「豹馬。龍宮コーチと清水はデキてるのかな?」


 「知らんがな」


 知らんがな。

 思わず素で返してしまった。

 キャプテンは最近付きっきりで指導してた清水先輩と輝夜さんの関係がきになる様子。

 輝夜さんは天然だから多分ないだろう。そんなに気になるならさっさとアタックせよ。

 彼女持ちの豹馬君からのアドバイスです。

 まずはデートからしてみてどうぞ。



 さて。そんなこんなで一回表。

 ミズチとプリンスのバッテリーはどう料理していくのか。


 そう思ってたんだけど、あっさりと三者凡退。

 配球も良く考えられてたし、前回序盤に変化球を多投させ過ぎたのを反省してストレート主体のピッチング。上手く打たせて取り、内野ゴロ三つと上々の立ち上がりだ。


 これは今日のミズチには期待出来る。

 早めに点を取って楽に投げさせてやりたい所。


 相手の先発はエースの櫻井君。

 キャッチャーの岡田君と息の合った投球術で、ここまで勝ち上がってきた。

 そろそろ相手チームも新戦力を試すんじゃなくて、ちゃんとした戦力を出してくる。

 我が龍宮高校は未だに一年と控え主体だが。

 とにかく試合経験を積ませたいからね。


 先頭バッターは速水。

 ここまで一二三以外あまり結果を出せていないが、この速水は中々に頑張っている。

 打ち取られるにしても、しっかり粘るし出塁率は悪くない。1番バッターとして良い働きをしていると思う。


 しかしここは7球目をセカンドゴロ。

 それでも球筋を次のバッターに見せる事は出来たし、最低限の仕事をしたと思っていいだろう。


 2番はMr.いぶし銀。

 なんとか塁に出て欲しいところだったけど、相手バッテリーの投球術に空振り三振。


 「あのバッテリーいいなぁ」


 「阿吽の呼吸って感じですよね」


 ミズチのキャッチボール相手をしてたんだけど、思わず見惚れてしまうぐらい綺麗なリードだった。

 そして両者共に顔が良いんだ。

 ああ。妬ましい。


 そして3番。

 いつもはプリンスが入ってる所だけど、今日は清水先輩だ。プリンスには少し楽な打順で打ってもらおうと思ったらしい。それでも6番なんだけどね。


 今日はいつもと違い木製バットを携えての登場だ。重い金属バットにするか悩んでたみたいだけどね。レオンに勧められて木製にしたらしい。


 清水先輩は今の所プロ志望ではない。

 初代ゴリラと同じ大学に行って、そこから考えるらしい。今でも何球団か注目してるらしいけどね。

 でも育成で〜みたいな感じらしい。

 育成はマジで厳しいからなぁ。給料も少ないし、チャンスもそんなにもらえない。


 偶に育成の星とか言われてる選手がいて、さも育成選手でもやれるんだみたいな美談があるけど。

 その下に何人の屍があるんだって話よ。

 某金満球団みたいに数打ちゃ当たる戦法してれば、そりゃ偶に当たるだろうよ。


 まぁ、これは俺の一個人の話なので。

 俺は育成は好きじゃないなぁって事です。


 そんな話は置いておいて。

 頑張れ。二代目ゴリラ。

 イケメンバッテリーをぶっ潰すのだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る