第225話 紅白戦2


 三者凡退にしてくだせぇなんて思ってたけど、タイガを抑えても魔王には回るんだよね。

 一回からレオンと勝負しないといけないって、どんな罰ゲームだよ。ほんと、今まで戦ってきた高校はご愁傷様としか言えないな。


 それはさておき、2番のタイガ。

 高校二年になって、心なしか体ががっしりしてきたように見える。長打も増えてきてるしな。


 それでも細マッチョなんだけど。最近のキャッチャーは動けないとダメだからな。

 一昔前の的が大きいだけのキャッチャーではダメなのである。


 しかし、キャプテンはカットボールで詰まらせてのショートゴロ。

 5球粘られたが、しっかり打ち取った。

 うーん。素晴らしい。タイガも抑えられるなら中々良い球に仕上がってきてるんじゃなかろうか。


 そして3番の魔王。

 もう打席に立つ風格がプロそのもの。

 父さんを見てるみたいだ。この対決にグラウンドのボルテージも上がってるように見える。

 スカウトらしき人も真剣な眼差しで勝負を見守る。ドラ一候補と魔王の対決。心躍らない訳がない。


 初球。

 アウトコースから鋭くインコースへ切れ込むスライダー。レオンはこれを豪快に空振る。

 スイングの風切り音がベンチまで聞こえてきたぞ。


 そのスイングだけでお金取れそう。

 しかしレオンはしきりに首を傾げている。

 あの空振りの仕方から見て狙ってたのは間違いない。だが、空振り。狙ってたレオンから空振りを奪えるスライダー。控えめに言って魔球である。

 キャプテンも手応えが良かったのか、うんうんと頷いている。


 「今のを決め球にした方が良かったんじゃないのと思っちゃうけど」


 レオン相手に一回見せるってのは大きい。

 あいつはすぐにアジャストしてくるからな。

 色んな選択肢を叩き付けないと、魔球だろうが平気で打ってくる。


 死後の世界でこれは魔球だと喜んでたツーシームも打たれたしな。

 まだあの時程の速度が出てないとはいえ、俺ちゃんはかなりショックを受けました。

 だからストレートの質を更に改良してみたり、縦スラに手を出してみたりした訳だが。


 2球目はアウトコースへボール1個分程外したカットボール。

 3球目は低めにしっかりコントロールされたスプリット。


 しかしレオンはこれを両方とも平然と見逃す。

 どれも手を出してもおかしくないボールだが、ピクリとも動かない。

 これだよな。レオンと対戦して嫌なのは。

 マジで何を待ってるか分からん。最適解は分かってても打てない球を投げるなんだけど。

 それをするのは後5年かかる。まぁ、駆け引きを磨けるのはありがたいが。


 カウント、ツーボールワンストライクでの4球目。投げたのはストレート…と思ったらチェンジアップ。レオンはこれに反応して打ちに行ったが、ファール。

 打球スピードが半端ない。すぐ横を通って行った一塁手が顔を青くしてるぞ。全く反応出来なかったからな。


 多分ストレート待ちだったんだと思う。

 少し逸った結果がファール。ストレートだったらホームランだったかもね。


 しかしこれでツーボールツーストライク。

 追い込んだ。ここでもう一回スライダーか。初球に投げた球ぐらいエグいコースに決まれば、打たれるにしてもホームランはない。……と思う。

 だが、レオンもあのスライダーは当然頭に入ってるはず。


 そしてキャプテン、プリンスバッテリーが選んだのは…。


 「え? マジ?」


 プリンスが中腰で構えている。

 そしてキャプテンが投げた。

 真ん中高め、ゾーンからボール一個分くらい外れた渾身のストレート。


 レオンのバットは空を切った。

 


 

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