第226話 紅白戦3


 「うおおおおっ!」


 レオンから空振り三振を奪い、ガッツポーズに雄叫びをあげるキャプテン。

 あのコースでレオンから三振を奪うとはな。


 チラッとレオンを見てみたけど、それはもう凄い顰めっ面をしていた。

 ボール球に手を出したのもそうだし、空振りしたのにも納得いってないんだろう。

 それだけキャプテンのボールが良かったって事なんだろうが。


 「良し! 良し! 良し!」


 ベンチに戻ってきたキャプテンは未だ興奮が冷めやらぬ模様。

 何度もガッツポーズをしている。


 「まさかあのコースに投げるとは思いませんでしたよ」


 「最初から決めてたんだ」


 あの打席初めて見せるストレートをあのコースに投げる。どうやら、プリンスと相談していた事らしい。だから、あの会心のスライダーも初球に投げれたって訳だな。


 「でもまだ一打席だけ。次もしっかり抑えないとね。バッターは三回に一回打てれば良いんだから」


 「そうですね」


 そんな話をしてると、こちらの攻撃は金子にあっさり三者凡退に抑えられてしまった。

 あの野郎。爪もすっかり癒えて、完璧なピッチングを見せやがってからに。

 

 「レオンを抑えても化け物はまだまだ続きますからね。油断せず行きましょう」


 「分かってる」


 なにせ、大浦、隼人、清水先輩である。

 バグみたいな打線だな。ほんとに。


 

 二回表。

 先頭バッターは4番の大浦。

 はてさて、キャプテンプリンスバッテリーはどうやってこいつを料理するのか。


 初球。

 アウトコースへ外したストレート。

 しかし、大浦はこれに反応。

 思いっ切り踏み込んで、逆方向に唸りをあげる打球を飛ばす。

 が、ギリギリ切れてファール。配球を読まれてたんだろうか? ともあれ命拾いである。


 2球目。

 アウトコースへカットボール。

 先程と同じコースから、更に外れていくボールだったが、大浦は悠々と見逃す。


 3球目。

 インコースへのフロントドアのスライダー。

 確実に当たるコースから、キレ良く曲がっていく球だったが、大浦はのけ反る事なくバットを出す。

 打った当たりはしっかり捉えていたように見えたが、球威が勝ったのか、レフトの守備範囲。

 しっかりレフトフライに打ち取ってワンアウトである。


 大浦は手をプラプラさせてるし、思ったよりも詰まらされたのかもしれんな。

 素晴らしい変化球だ。


 さてさて。次は5番の隼人。

 得点圏にランナーは居ないから安牌だと思いたい所だが果たして…。


 初球。

 アウトコースへチェンジアップ。

 ここまで初球の入りは全部速球系だったからな。

 裏をかいた感じなんだろうが。


 「うーん。こいつも覚醒すんのか?」


 俺は隼人の打った打球を見ながら呟く。

 打球はライトの頭を超えてネットへ。

 逆方向へ逆らわずに打って緩い球をあそこまで運べるって。龍宮の5番らしく、こいつもしっかりバケモンなんだよなぁ。


 しかも驚いたのはランナー無しで打ったという事だ。キャプテンも油断はしてなかっただろうが、打たれても単打までと思ってたはずだ。

 それが当たり前のようにホームラン。

 キャプテン、ちょっと呆けてるけど大丈夫かな?


 「隼人がランナー無しで打ち始めたらいよいよレオンなんだが」

 

 どこまで龍宮打線は強化されていくんでしょうねぇ。

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