第227話 紅白戦4


 隼人にホームランを打たれたものの、キャプテンはしっかり持ち直して、清水先輩を三振、一二三少年をセカンドゴロに打ち取った。


 それでもベンチに帰って来たキャプテンの顔は釈然としていない。


 「うーん…。岸田相手に油断なんてする訳ないんだけど…。そんなにコース甘かったかな?」


 「どうでしょうね。後から映像を見返してみないと分かりませんが…。俺も意外でした」


 確かに最近は、ちょこちょことランナー無しでも打ってたけども。

 それでもレオンから三振を奪い、大浦もしっかり打ち取った、絶好調のキャプテンだ。

 甘い球だったのか、それとも本当に隼人が覚醒したのか。ちょっと次の打席も要注目だよね。


 「まぁ、隼人を次の打席もランナー無しで迎えれるかはキャプテン次第なんですけど」


 「そうだね。流石に一打席目ほど上手く抑えれるかは分からないな」


 何せ隼人の前を陣取るのは、レオンと大浦。

 その前にウルやタイガだっている。決して簡単に抑えれる相手じゃないし、もう一回隼人をランナー無しで迎えれるかって言われると、かなり難しいのが本音だろう。俺もちょっと自信ない。


 「あ」


 「おお!」


 そんな事を思ってると、控え組の4番に入ってる剛元がもう少しでホームランって当たりのツーベース。しかも捉えたのはカーブだ。

 ただのカーブじゃないぞ? カーブマスター金子の一級品のカーブである。


 「剛元も変化球に合い始めたか」


 「金子のカーブを打てたのはかなり自信になるんじゃないかな?」


 「ですね。出来たらホームランが良かったんですけど」


 金子から連打ってのはキツいんじゃないかなぁ。

 それでもノーアウトで得点圏にランナーだ。

 ここはなんとかモノにして、レギュラー組にプレッシャーを与えたい。

 まずは同点にしたいところだが。


 5番がインコースの球を無理矢理右方向へ打って進塁打。こういうさり気ないプレーが大事なんだよな。特に好投手相手には。そう何度もチャンスが得られる訳じゃないし。


 ワンアウト三塁。

 犠牲フライでも内野ゴロでも一点を狙える。

 レギュラー組は前進守備を選択。中々強気。

 控え組には一点もやらんという事だろう。


 そして6番がレフトへフライを打ち上げる。

 飛距離は微妙。大浦がちょっと下がって、既に捕球体勢に入っている。

 ランナーは決して足が速くない剛元だが…。


 「ゴー!!」


 ランナーコーチはタッチアップを選択。


 「いよいしょー!」


 大浦が叫びながらレーザービーム。

 送球はワンバウンドでタイガが構えた場所へストライク。

 剛元は回り込みながらスライディングするも、判定はアウト。


 「凄い送球だったね」


 「あれで肩も良いんだよなぁ」


 俺とキャプテンは、満面の笑みでベンチに帰って称賛されている大浦を見る。

 あの小さい体からどうやってあんな送球が出来るのやら。しかも山なりとかじゃなくて、レーザービームだし。これが埋もれてた才能なんて信じられないよね。


 「残念ながら同点には追いつけませんでしたが、まだ序盤も序盤。しっかり頼みますよ、キャプテン」


 「もうこれ以上点はやらないよ」


 うむうむ。その意気です。

 俺もそろそろ肩を作り始めるかね。

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