第228話 紅白戦5


 「燃える展開だなぁ」


 五回表。

 ツーアウト1.2塁。

 バッターレオン。


 俺は既に肩も作り終わって、ベンチで対決を見守る。ここまでスコアは変わらず1-0。

 両ピッチャーはランナーを出すものの、ホームは踏ませず。このままピッチャー交代と思われたが、ウルのヒットとタイガへの四球で、レオンに打順が回ってしまった。


 ちょこまかちょこまかと一塁でウルが動いてたからなぁ。どうしても気になったんだろう。

 ウルの足なら盗塁する事も出来たのに、結局動かずだったからな。


 とにかくこのピンチでレオン。

 あのマウンドのプレッシャーは半端ないだろうなぁ。とても紅白戦とは思えない雰囲気を醸し出している。ざわざわしてた野次馬の生徒達や、スカウトも今はシーンとして対決を見ている。


 「リードでけぇ」


 ウル、タイガの両方ともリードがでかい。

 あれは気になるぞー。流石にツーアウトだし、バッターがレオンだから走ってこないと思うが…。

 そういう裏をかいてくるのがタイガだからなぁ。

 油断は出来ん。


 初球。

 ランナーを気にしつつ投げたのはスプリット。

 レオンは一瞬反応したものの、バットは出さずにボール。レオンが反応して振らないのは珍しいな。

 スプリットを狙ってたのか、それともブラフか。

 考え過ぎて訳分からんくなって来ました。


 2球目。

 スライダーを膝元へ。

 インコースを抉る素晴らしいボールに見えた。

 が、レオンは腕を綺麗に畳んでスイング。

 カンッという打球音が鳴り、ボールはライトへ。

 微妙に詰まってる様子。全員が固唾を飲んで打球の行方を見守る。


 ライトがジャンプ。

 そして打球はグラブにすっぽり収まった。


 「うおおお!」


 キャプテンがこれ以上ないくらいの感情表現をしている。レオンをチラッと見てみると、無表情でライトを見ていた。

 本人的には捉えたと思ったんだろうなぁ。が、微妙に詰まってたと。キャプテンのスライダーが思ったより鋭かったのか、球威があったのか。

 どっちにしろ、この打席はキャプテンの勝利である。二打席目はツーベースを打たれてるが。


 「豹馬、後は頼んだよ」


 「おかのした」


 ベンチに戻ってきたキャプテンはかなり息が上がっている。五回しか投げてないのに、完投したぐらいの疲労度だ。

 それだけ龍宮のレギュラー陣のプレッシャーが凄かったって事だろう。


 渡されたこのバトン。

 しっかり受け継ぎましたぜ。

 漢、三波豹馬。パーフェクトなピッチングを見せると約束致します。

 ってか、目の前であんな対決を見せられて滾らない野球プレイヤーはいないと思うんだ。

 現に俺はさっきからアドレナリンが出て仕方ないぜよ。


 ここで控え陣の打者も奮起して欲しかったところだが、残念ながら金子の前に三者凡退。

 金子もさっきの対決にアテられたらしく、珍しくガッツポーズして吠えてやがる。多分金子もこの回で交代だろうが。あの状態の金子と投げ合ってみたいなとも思うが、ミズチの投げ合うのも悪くない。

 これは中々楽しくなってきましたな。

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