第177話 三回戦


 春季大会三回戦。

 この日も豹馬君はベンチスタート。

 大会期間中ということで、強度の強い練習も出来ないから力があり余っている。

 それがどういう事かというと。


 「日曜日だからか人が多いぜ!! こんな日に試合に出てアピール出来る面々は羨ましいなぁ!!」


 テンションがかなり高くて面倒な状態という事である。

 試合に出たいですよと腕を回して監督にアピールするがフル無視である。悲しい。

 チームメイトのみんなもまたやってるよみたいな感じで構ってくれない。


 「春季大会はやる気が出ないとか言ってたでしょ?」


 「それはそれ。これはこれですよ。みんなが楽しそうに野球やってるのに、眺める事はしか出来ないなんて。俺からしたら拷問ですね」


 同じくベンチのキャプテンは呆れた様に俺を見てくる。あなたは良いですよね。前の試合で投げれたんですから。勝ち組じゃないですか。


 「確かにベンチにずっと座ってるのは面白くないっすね!」


 こちらも同じくベンチスタートの大浦君。

 あなたも前の試合出てましたよね? 木製バットデビューで早速ホームラン打ってましたよね? スカウトにアピール出来て良かったじゃないですか。


 「まぁ、明日デートだし。その為に力を蓄えてると思えば…」


 「パン。分かってるだろうな?」


 「パン君分かんない」


 レオンから凍える様な声が聞こえたので、急いで避難する。そろそろシスコンを卒業するべきですよ。お義兄さん。

 君は早く守備についてきなさい。せっかく試合に出られるんだから。


 今日は前回試合に出てなかったレギュラー組が出ている。後はまた控えの面々だな。少ないながらもこういう風に試合経験を積めるのは良い事だろう。

 万が一レギュラー組が怪我したら、しっかりバックアップしてもらわないといけないからね。


 「んん? あの美人さんまた居るな?」


 前回、結局思い出せなかった美人さんが観客席に座ってノートパソコンをぽちぽちしていた。

 ほんと、どこで見たんだろう。せっかく忘れてたのにまたモヤモヤしてきた。


 「野球が好きなのかね? ノートパソコンを持参してるって事はデータ取りでもしてるんだろうか。あ、どっかの高校の偵察員とかかも」


 それなら見た事あるのにも納得だな。試合の時にチラッと見かけたとかだろう。

 まさか、掲示板をやってる訳じゃあるまいし。


 「なんかちょびっとすっきり」


 モヤモヤが解消されましたな。俺の中ではだけど。合ってるかどうかは知らないけど、モヤモヤしなくなったからOKです。


 「さーて。頑張れカーブマスター。シード権を獲得してくれぃ」


 「金子は後輩が出来てから、なんか地に足がついた気がするね」


 確かに。今の所、カッコいい先輩ムーブは全部金子にやられてしまっている。

 そのせいか後輩の支持率的なのが半端ない。まだ入部したてなのに、金子派閥みたいなのが出来るかもしれんな。


 「今日は日曜日で後輩も見てるから、かなり気合いが入ってるんじゃないかな」


 「羨ましい」


 俺も後輩にカッコいい所を見せつけたかった。

 今日勝てば次の試合はまた平日だから、後輩に見せつけられないんだよね。

 俺の承認欲求が怪しくなってきましたよ。


 

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