第204話 VS造新学園2


 未だにワンアウト2塁のチャンスで、迎えるは5番の剛元。変化球への対応は徐々に改善傾向をみせている。父さんもようやく理論的に話せる人間を見つけれてホッとしてるみたいだ。

 大浦や一二三少年は例外って事でしょう。


 「変化球が苦手ってバレる前に速球系で勝負してほしいな」


 「一.二打席目は大丈夫だと思うがな。速い球に的を絞って変化球は無視すれば良い」


 的を絞って打てる人は良いですなぁ。

 俺はヤマが当たってもバットに当たらないから。

 どれだけ高度な心理戦に勝利しても意味がないのである! ドン!

 基本的にアウトコースへのストレート待ちだけどさ。あそこが一番当たるんだよ。


 「おっ!」


 剛元はレオンが言った通り、変化球をフル無視で速球系を待ち続けた。

 そしてアウトコースのカットボールを、無理矢理引っ張る。

 打球はレフト前に落ちて、一二三少年が帰還。

 更に追加点である。


 「あのコースを引っ張れるって凄いな」


 「多分不器用なんだろう。逆らわずに逆方向に打つのが苦手なのかもしれん。俺ならあの球は逆方向へホームランだ」


 はいはい。天才天才。

 高校生で逆方向に放り込める奴なんてそうそう居ないんだよ。お前基準で考えるな。


 「剛元は典型的なプルヒッターかもなぁ」


 それはそれでいいんじゃないかね。

 打撃の事はよく分かりませんが。

 あのコースを引っ張られたのは、投手からしたらショックでしょうよ。


 その後6.7番は抑えられたものの、初回から先制パンチに成功して3-0。

 これは緊張してきたとか言っていたミズチはかなり楽に投げられるんじゃなかろうか。

 本当に緊張してたか怪しいもんだけど。



 「あのマウンドで飄々としてる感じはパンにそっくりだな」


 「豹馬だけに?」


 「………」


 おっと。なんか寒くなってきましたね。

 もう五月終盤で結構暑くなってきたってのに。

 レオン君の冷たい目のせいかな? 体調崩しちゃうからやめてほしいもんだね。



 造新高校の一番は右の好打者。

 センバツでも三割超えの打率を残していたらしい。プロも何球団か興味を示してるとの噂がある。

 白馬君の方が何倍もえげつないと思うけど。

 まぁ、それはさておき。


 初球。

 インコースからアウトコースへのスライダー。

 輝夜塾のお陰で、ミズチのスライダーは一段階進化してるからね。


 バッターは若干のけ反っていたが、コールはストライク。しかもコースはアウトコース付近ときた。

 かなり驚いてるように見える。


 「先発が一年って事で舐めてたのかもな」


 「3点先制されてるのに悠長だこと」


 一年だからって舐める理由はどこにもない。

 俺達だって去年それなりに無双してたしさ。

 ミズチだってシニア準優勝チームのエースだったって情報ぐらいはあるだろうに。

 実績だけで言えば俺達より上だぞ? 俺達の代はベスト4で負けてるからね。


 その後、ミズチは初球のスライダーを有効に使って先頭バッターをセカンドゴロに仕留めた。


 「腰が引けて手打ちになってたな。プリンスも中々味なリードをするじゃないか」


 スライダーのキレにビビってあまり踏み込めてなかったから、アウトコースへの対応が出来てなかった。キャプテンの劣化版だなんて掲示板で言われてるミズチだけど、充分良いピッチャーだ。

 しかもあいつの決め球のシンカーはまだ投げてないし。これはキャプテン達の万が一の登板もないかもしれんな。

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