第47話 唐突な夏の終わり
「キャプテン」
俺はキャプテンに声を掛けて報告しようとしたが、キャプテンは俺を見て全てを察した様だった。
「無理か」
「すみません。ほんとすみません」
「お前が謝る事はない。それに試合はまだ終わってないぞ? ここは偉大な先輩様に任せるんだな!」
ふははははと笑いながらキャプテンが監督に報告しに行った。
監督は驚いていたが、すぐに指示を出し吉見先輩と金子が肩を作り始めた。
俺は顔を上げる事すら出来ず、ベンチに座り込み項垂れた。
そして、龍宮の攻撃が終わり俺の交代が告げられると球場は騒然とした。
そりゃそうだ。まだ2人にしか投げてないし三井先輩もいない。
三高ベンチも動揺してる様に見えるし、俺と交錯したバッターと三井先輩に当ててしまったバッターは死にそうな顔をしている。
まぁ、わざとじゃなくても罪悪感は感じてしまうよね。
流石の俺でも逆の立場なら平常心ではいられない。
そして俺は試合を見に来ていた母さんと一緒に試合途中ながら病院に向かった。
「負けたか」
病院で診断をしてもらいながらも、球場に残った父さんから試合経過を逐一聞いていたんだが、どうやら龍宮高校は負けてしまったらしい。
試合はあの後になんと延長戦までもつれ込んだ。
吉見先輩が九回までに2点を取られるも、キャプテンと隼人のタイムリーで振り出し。
十回にも1点取られたがウルのタイムリーでまたもや追いつく。
しかし、十一回に吉見先輩が捕まり、変わった金子も抑え切れず4点取られ、裏にレオンのホームランで一点返すもゲームセット。
8ー5で敗戦した。
「負け。負けか」
正直、今日試合が始まるまで負けると思っていなかった。
なんやかんや勝てると思ってた。
「高校野球は甘くないねー」
気付けば涙が出ていた。
病院のベッドで、大の字になりながら周りの目を気にする事なく泣き喚いた。
「また俺のせいか」
シニアの時も俺の体調管理が甘かったせいで発熱で投げられず負けた。
今回は不慮の事故とはいえ、託されたマウンドで出て行ってすぐに交代。
「あー嫌になっちゃうね」
あのゴリラと一緒に甲子園に行きたかった。
生意気な一年坊主を自由にやらせてくれたのはあのキャプテンがいたからだ。
吉見先輩だって、急に入ってきた一年に嫌な顔する事なく受け入れてくれた。
他の先輩だってベンチ入りメンバーを追われてもサポートに徹して何度も俺達を助けてくれた。
恩返ししたかった。
このチームで甲子園に行きたかった。
でも肝心な時に役に立たなかった。
シニアの時以上に自責の念に駆られる。
「すみません」
俺は誰もいない病室で、誰に言う訳でもなく謝る。
俺、中学の時どうやって立ち直ったんだっけ。
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