第130話 VS神町3


 二回表の龍宮の攻撃は三者凡退に終わった。

 8番からの下位打線だし仕方ない。


 因みに、俺の甲子園初打席は豪快な三球三振。

 アウトコースのストレートにヤマを張っていて、実際にその通りにボールが来たんだけど、何故かバットにかすりもしなかった。

 チームメイトからは暖かい失笑を頂きました。

 最高に薄情な奴らだぜ。


 「まっ、俺の仕事は0に抑える事ですし? 点はみんなが取ってくれるもんね」


 「本当にアウトコースのストレートを狙って振って行ったんだよね? ボールとバットの間、20cmぐらいあったよ?」


 不思議だよね。気分はホームランだったんだけど。イメトレは完璧なのになぁ。


 「打者一巡するまでは、ストレート、チェンジアップ、ナックルカーブで抑えるぞ。スライダー系とツーシームはまだ温存しても大丈夫だろ」


 「的を絞らせない様にリードしなきゃね。責任重大だ」


 1番〜3番を見た感じは、狙い球があるような感じでもなかったけど。

 最初に投げた、ストレートに引っ張られてる感はあったけどさ。



 先頭は4番。

 当たれば何処までも飛んで行きそうな打者だ。

 当たればだけどね。


 初球はアウトコースへナックルカーブ。

 反応はしたが、手を出さずにストライク。

 ストレートにタイミングを合わせてそうな雰囲気だなぁ。


 2球目はインコースへチェンジアップ。

 抜けたり、少しでもコースを誤ると簡単に持っていかれるボールを平気で要求してくるタイガに震えるね。


 「この、今の俺がコントロールミスをする事はあり得ないけどな」


 そんな事を呟きながら、しっかり構えたところへ投げ込む。

 これもバッターは手を出さずにストライク。

 今回は反応すらしなかった。


 3球目はストレート。

 遅めのボールを続けて早いボールで仕留めるのは定石中の定石。

 バッターもストレートを待っていたんだろうが、コースは予想外だったんだろう。

 ど真ん中に投げられたボールを、内野に打ち上げた。


 「ヒリヒリするなぁ。一歩間違えば柵越えだぞ」


 ショートの隼人が定位置でキャッチしてワンアウト。27者連続三振の夢は途切れたな。

 ここからはパーフェクト狙いだ。


 「まっ、27者連続三振しようと思ったら、とりあえず変化球の封印なんてしてる場合じゃないわな」


 流石にこれは最初から出来るなんて思っていない。いつかやってみたいとは思うけどね。


 続く、5.6番を連続三振で仕留めてチェンジ。

 脳内麻薬がドパドパと出て来て気持ちいい。


 「絶好調。ああ絶好調。絶好調。豹馬」


 「くそみたいな俳句辞めてくれる?」


 失礼な。これ以上ない一句だろうが。

 俺の状態をこれでもかと表してる、史上稀に見る作品だぞ。


 エゴサしてぇ。

 絶対今頃、SNSで掌ドリルが多発してるだろ。

 この調子で、何か記録でも作りたいねぇ。

 甲子園で完全試合って過去にあったかな?


 もしないなら、ここで達成したい。

 これで、一躍全国区だぜぇ。

 まだ二回だから、意識するのは早いかもだけど。

 油断だけはしないように頑張ろう。

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