第155話 VS桐生7
「うへぇ。まじかよ。確かに一塁は空いてるけどさ」
「ワンアウト1.3塁で大浦だよ? レオンも嫌だけど、大浦も嫌だなぁ」
俺も嫌。苦肉の策なんだろうなぁ。
ゲッツーを取れたら御の字ってところか。
その後は得点圏の鬼、隼人だし。ほんと、こいつら誘って良かった。
大浦は突然変異種だけど。高校の間はこいつらと勝負したくないよね。
俺が身体も万全に出来て、完成された状態でなら勝負を受け付けます。
その頃にはみんなも更に成長してるんだろうけど。
「大浦の心境はどうだろうな。普通は目の前で敬遠されるなんて屈辱なんだろうけど」
「大浦だからねー」
俺なら気合いで空回りするな。間違いない。
☆★☆★☆★
(うっひゃー! 小さな巨人の全国展開のチャンスっす!!)
豹馬や金子が思った通り、大浦は屈辱などとは全く考えてなかった。
チャンスで自分に打席を回してくれた事に感謝しているくらいだ。
(ここで活躍するとスカウトの注目は間違いなしっす。やってやるっすよー!)
龍宮高校に入学したての当初は、シニアから鳴り物入りで入ってきた豹馬達に圧倒されていた。
その頃は多少バッティングに自信があったくらいで、自分とは住む世界が違う人種なんだと、レギュラー等は諦めていたくらいだ。
なんとか、ベンチ入りぐらいはと思っていた大浦に転機が訪れたのは、投手不足から仕方なく始めたピッチング練習。
この練習のお陰で、今までどこかしっくりきてなかった自分のバッティングにカチリとピースがハマった。
早速、練習をしているとネット直撃を連発。
あれよあれよと、いつの間にか4番という位置に座っていた。
(レオンっちが敬遠されるのは分かってた事っす。まだまだチビは舐められてるって事っすね)
結果が出始めると、今まで思ってもなかった事まで、考えるようになる。
プロ入り。それもただ入るだけではなく、しっかりと活躍する。
そうする事で、自分のような身長に恵まれていない他の小さな選手達にも注目してもらいたい。
大浦自身は自分の身長の事は気にしていないが、身長のせいで正当に評価されない事は残念に思っていた。
(俺はチビの希望の星になるっす!)
相手エースが投げてきた初球のアウトコースへのストレート。
それを大浦はフルスイング。打った瞬間それと分かる当たりはセンターバックスクリーンへ飛んでいった。
☆★☆★☆★
「えっぐ」
「かっこいいー」
大浦が初球のストレートをぶっ叩いた。
打った瞬間に本人は打球を見ずに龍宮ベンチに向かってガッツポーズをしている。
「画になる確信歩きだな」
確信歩きからのバットフリップ。
高校野球でそれをやるとまた叩かれるぞ。
でも、今はそんなの関係ないよね。それぐらいえぐくて、完璧な当たりだった。
「やってやったすよー!」
「うぇーい!」
満面の笑みでベンチに戻ってくる大浦。
下っ端感が半端ない奴だけど、存在感は親玉クラス。相手エースにはお悔やみのお言葉を申し上げます。
「これで小さな巨人がさらに有名になるっすねー」
「気に入ってるな」
大浦は興奮冷めやらぬといった感じで、笑顔が途絶えない。
大浦のスリーランホームランで、4-2と一気に逆転した。この2点リードは途轍もなく大きい。
キャプテンもかなりありがたい援護だろう。
その後、隼人はランナーが居ない事でお察し。
清水先輩はツーベースを打ったものの、その後が倒れて五回裏が終わった。
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