第154話 VS桐生6
すぐさま点を取り返して試合を振り出しに戻したいところだったけど、相手エースはそれを許さず。
下位打線からの打順だった事もあり、三者凡退四回裏が終了した。
「上位打線がちょこちょこヒットを打ててるから、後一歩ってところだと思うんだけどな」
「エースの尾寺も調子を上げてきてるよね」
確かに。ストレートとスライダーのコントロールが回を重ねる毎に良くなって来ている。
フォークはたまに抜けてる時があるから、なんとかそれを上手く狙えればって感じ。
「次の回の攻撃でエースを捉えられないと、ちょっと面倒になるな」
「三巡目だしね」
因みに二打席目のレオンは四球である。あれは勝負を避けられてしまっていたな。
大浦と隼人は二打席共に抑えられている。隼人はまぁ、得点圏にランナー居ないとやる気を出さない子だから仕方ないけど、大浦がなぁ。
二打席目は外野の間を抜けるかと思ったんだけど、相手守備の好プレーに阻まれている。
「まぁ、まずはこの回。みっち〜にしっかり抑えてもらって、良い流れで攻撃に移りたいところだな」
「みっち〜?」
知らんのか、金子。
3Pをスパスパ決めてくれるけど、体力不足なツンデレ不良先輩の事をそう呼ぶんだぜ。
「全然キャプテンに当て嵌まってないじゃん」
いや、名前が一緒なものでつい。
キャプテンはしっかり五回表を三者凡退に抑えて帰ってきた。しかし球数は既に100球を超えていて、ちょっと肩で息をしている。
バントの構えで走らされたりと、毎回体力も削られているからな。
「いやいや、まだまだ全然余裕よ? 今日は完投するし?」
あぁ。キャプテンの面倒な状態がまだ続いてる。
流石に冗談だろうけど。
「この回が終わったらもう一回ブルペンに行くか」
もって七回だろう。監督がキャプテンをどこまで引っ張るか分からないけど。
俺なら次にランナーが出たら交代するね。
五回裏。
先頭バッターは1番のウル。
出来ればクリーンナップの前にランナーを溜めたい。レオンと勝負してもらう状態を作らないと。
俺の願いが通じたのか、ウルはサードへの内野安打。打球は確かに少し弱かったけど、普通に正面のゴロをセーフにしてらっしゃる。
「相手守備が若干気を抜いてたところもあるか。それでもあの当たりをヒットにされると、投げてる側からしたらたまらないけど」
打ち取ったと思ったらセーフって言われるんだもんね。エラーよりも心にくる。
2番はタイガ。最初からバントの構えをしているけど果たして。
普通に送ってもレオンは歩かされるからなぁ。大浦よりもレオンが嫌なんだろう。
そして初球。ウルはスタートを切ったが、タイガはそのままバント。絶妙に三塁線に転がした。
サードがバント処理して、一塁に投げるのを見てウルは更に加速。二塁を蹴って一気に三塁へ向かう。
「はえー」
一塁はアウトになり慌てて三塁に投げたが、既にウルは滑り込んでいた。どうしても三塁をアウトにしたかったなら、一塁を諦めて途中でボールをカットしにいくべきだったな。
加速装置でもつけてるんじゃないの? サイボーグみたいにさ。
これでワンアウト三塁。しかもランナーは俊足のウル。浅いフライでも犠牲フライに期待出来る。
しかも打者はレオンだ。あいつなら最低限はやってくれる。同点は貰ったなと思ってたんだけど。
バッテリーが選んだのは敬遠だった。
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