第60話 松美林との練習試合 後編


 試合は四回表。

 大浦はあの後もう一点取られて、三回の途中から金子と代わって今はライトにいる。

 金子はランナーを出しつつも無失点に抑えている。

 試合は6ー2とリードしているが、まだ中盤で油断する事は出来ない。


 「大浦、真剣に考えた方がいいっすね」


 「絶好調だもんねー、打者としては」


 大浦は、二打席目もツーベースを放ち猛アピールしている。


 「うーん、悩ましいっすね。俺、秋大間に合うか微妙ですし」


 「俺に関しては絶望的だからね。流石に金子1人に任せる訳にはいかないし」


 やっぱり現状維持かなー。打者に専念させてあげたい気持ちはあるんだけども。


 「ピッチャーの練習してて、急にバッティングが伸びたんでしょ? その練習が大浦にとって良い影響を与えてるんじゃない?」


 「あ、確かにそうっすね。何が良かったのやら俺にはさっぱりですが」


 ピッチャーの練習してバッティングが良くなるなら俺は今頃天才バッターになってる筈なんだが。

 この辺は個人の感覚かねぇ。



 その後も、試合は進み7回裏。

 金子は一点を取られたものの、白馬君を二打席抑える大健闘。

 途中登板なのに球数がそろそろ100球を超えるが、今日はこのまま頑張ってもらいたい。


 打線は途中から1年レギュラー組を全員下げて、控えの選手を出し、1点は取ったものの相手ピッチャーのレベルを考えるとすこし物足りない。

 やっぱりネックは下位打線かなあ。上位打線は強豪校にも引けを取らないと思うんだけどね。

 大浦と清水先輩が打てる様になってきたのは良かったかな。


 「相手も選手を入れ替えてきてるけど、やっぱり選手層が厚いな。流石に名門校だね」


 「こっちは、新設校な上にまだまだ結果が出てないっすからね。今回の夏ベスト4で西東京にはそこそこ知られたかもですが」


 「そうだよねー。秋もいい所まで進んでもっと名を上げないとね。来年の有力株の確保の為にも」


 その通り。

 これから先の事を見据えるなら来年以降の入学してくる選手達が不可欠。

 学校のスカウトさん達にも頑張って欲しいが、俺達も結果を出さないとね。

 今年は俺がシニアのメンバーを誘ったからなんとかなったけども、レオン達が居なかったらと思うと寒気がするね。誘った俺ナイス。


 「キャプテンは知り合いの後輩とかいないんすか?」


 「居るけど野球ガチ勢じゃないんだよね。どっちかと言うと見る方が好きな連中が多いかな。俺は軟式出身だしシニアでやってた訳じゃないしね」


 およ? それは初耳。確かにこれだけのポテンシャルがあるのに、実績のない龍宮にいるのはおかしいなと思ってたけど高校に入って化けた感じかな?


 「豹馬の方は? 顔が広そうだけど」


 「今年甲子園に行ったりしてれば、それを餌に誘えてたかもですねー。何人か目を付けてたんですけど既に進学先が決まってる場合もありますし」


 そろそろ、有力株は進学先がほとんど決まるんだよね。

 そこであぶれた掘り出し物選手をスカウトの人に特待で誘ってもらうしかないね。




 試合が終わった。

 7ー3で龍宮高校が勝ったものの、交代してからほとんど点を取れなかったのが問題だね。

 まぁ、課題が浮き彫りになった練習試合という事で良かったんじゃないでしょうか。

 金子は白馬君を抑えたりして自信にもなっただろうしね。

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