第61話 合宿終了


 練習試合が終わり、松美林にお礼を言って帰って行った後。


 「はい、10日間お疲れさん。明日から3日間は休みや。帰省する奴もおるやろ。帰りが間に合わん時は早めに連絡してくれ」


 みんなも久々の休みに嬉しそう。

 ずっと野球漬けもしんどいし、体を休めないと逆に成長しないからね。

 まぁ俺は全然疲れてないけどさ。


 「ハメ外し過ぎんようにな。不祥事とかは勘弁してくれ」


 困ったな。せっかくの休みなのにやる事がない。

 甲子園も始まってるしダラダラテレビ見ながら過ごすか、誰か誘って遊びに行くか。

 あぁ、彼女持ちが妬ましい。

 こういう時に彼女とデートするって選択肢がある奴が妬ましい。


 「はい、ほな解散。怪我に気を付けてな」



 それぞれが休みの予定の話をしながら帰って行く。


 「それで? みんなは休み何すんの? あ、隼人はどうせデートだろ? くたばれ」


 「うるせぇ」


 はん。分かりきってる奴の予定は良いんだよ。


 「俺はマリンとコミケに行く予定だよ」


 「マジか」


 あれは戦争だぞ? 歴戦の猛者達がウヨウヨいやがるからな。熱中症には気を付けて。


 「僕は1日予定がある日があるけど、それ以外は家で甲子園みるかなー」


 「俺は3日間暇だな。甲子園を見る事になるだろう」


 おっ。ウルとレオンは甲子園か。

 じゃあ便乗させてもらおうかな。


 「じゃあ俺の家で一緒に見ようぜ。飽きてきたらジムで汗流せるしな」


 「いいね! 僕は参加させてもらおうかな」


 「では、俺も参加させてもらおう」


 よーし! ぼっち回避。

 すみませんね、寂しがりやで。


 「そういえば、渚ちゃんは家にいるのか? もし暇だったら一緒に連れて来てもいいぞ」


 「ふむ。最近はモデル仕事も落ち着いて来てるみたいだからな。時間が合えば誘っておこう」


 「ああ。妹も喜ぶよ」


 よしよし。

 これを機に渚ちゃんと仲良くさせていただきたい。

 レオンの妹ってだけでハードルはかなり高いんだが。


 「パン。渚に手を出したら、バットで頭カチ割るぞ。分かってるな?」


 ほらね? こいつ、隠してるつもりなんだろうが結構なシスコンだからな。


 「もちろん、分かってますとも」


 渚ちゃんと仲良くする。

 夏休み最大ミッションだぜ。

 この夏で俺はイーサン・ハントを超える!!


 「ウルは1日予定あるって言ってたけど、何するんだ?」


 「一応デートのつもりだよ」


 お? 絶交か?


 「お前! 合宿の時は全然って言ってたじゃんか! この裏切りもの!」


 「いや、昨日の夜にお誘いがあってね…その神奈さんから」


 おぉ! 神よ! こいつに毎日タンスの角に小指をぶつける神罰を!


 「ほほー。よりにもよって俺の妹と。うちの天使を泣かしたらどうなるか分かってんだろうなぁ? お?」


 「いや、一緒に何処か出かけませんかって言われただけだし、泣かせる展開にはならないと思うんだけど」


 そういう事を言ってるんじゃないよ! これだから馬鹿は!

 まあ? 薄々と神奈がウルに好意を寄せてるのは知ってたし? お互いがいい感じなら応援しますけど?

 この兄離れした寂しい感じは抑えきれないね。

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