第39話 試合後


 結局、その裏に更に1点追加して九回も抑えて5ー1でゲームセット。

 スコア的には完勝だが、気持ちはブルーである。


 「2年。あれで2年か。まだ伸び代もあるんだろうなぁ。嫌だなぁ」


 マジで高校生活中は顔も見たくなかったなぁ。

 俺だって、まだまだ成長の余地はあるけど体が出来るのに少なくとも後4.5年はかかる。

 ムキムキマッチョマンになってからなら、いくらでも勝負するのに。

 こういうのってあれだよね。

 こっちが必死にレベリングしてるのに、主人公を覚醒させる為に負けイベントで出てくる四天王的な。

 勘弁してくれよ。俺は覚醒しません。

 

 「三波くん!!」


 試合後、球場の外でチームのバスを待っていると、にっくき白馬君が声をかけてきた。

 そちらを見ると、薄らと涙の跡があるものの、笑顔である。

 イケメンスマイルごちそうさまです。


 「あ、白馬さん! どうしたんすか?」


 「いや、連絡先交換してもらおうと思ってね。それに気になる事もあったし」


 「あ、是非是非! それで気になる事とは?」


 俺はそそくさと鞄からアイポンを取り出しSNSを開きながら考える。

 気になる事? なんだろか? 

 もしかして、心の中の恨み節が通じてしまったか? 

 なんて思いながら白馬先輩の顔を見る。

 うわぁ、性格良さそう。


 「今日、調子悪かったの? 球速も130キロそこそこしか出てなかったみたいだし、変化球のキレも前回の創英より鈍かったんだけど」


 「あ、あぁー。それはですね。ちょっと今、体の制御が出来てないんですよ。急激に身長が伸びたりしてメカニズムが狂ってる感じです。後、体の出力上がったんで全力で投げると肘を怪我しそうで」


 良い人ー!! 

 めっちゃ良い人じゃないか!! 

 わざわざ、負けた相手の選手の心配しに来るなんて。

 自分の事しか考えてない俺の器の小ささを再確認出来ました。


 「そうだったんだ…確かに三波君大っきいもんねぇ。今日はありがとう。負けたのは勿論悔しいけど、絶対リベンジするからね! 秋で戦うかも知れないし! 練習試合とかも組めたら嬉しいな」


 駄目だ。

 俺の悪しき心が浄化されていく。

 なんて聖属性なんだ。


 「受けて立ちますよ! 次に会う時の俺は更にレベルアップしてますからね! 全打席抑えてみせます!! 練習試合は監督に言っときますね。強いチームとの試合は良い経験になりますし」


 それから10分程世間話して、白馬君と別れた。

 SNSに登録された名前を見てみてると思わず吹き出してしまった。


 「んふっ。漆黒の白馬って。んっ、んふふふ。あかん。笑いが止まらん」


 なるほどなるほど。

 イケメンで性格良くて野球が上手い。

 どこに欠点があるのかと思ったら、厨二病であられましたか。

 てっきり、性癖を拗らしてるもんかと。

 漆黒の白馬って。黒なのか白なのか。

 とりあえずスクショしとこう。

 これが黒歴史になった時に精神攻撃に使えるかもしれん。

 ……こういう事考えてるから性格悪いとか言われるのかな。


 「パン、どうしたの? 笑ったり、テンション下がったりと気持ち悪いよ?」


 どうやらマリンに見られていたらしく、気持ち悪いと言われてしまった。


 「白馬君の聖属性に当てられて浄化されそうになった」


 「アンデッドじゃん」


 「それはお前だろうが!」


 腐女子にアンデッドって言われたら、取り返しがつかないじゃんね。

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