第38話 VS松美林4
チームメイトとの絆を再確認して少しした後。
監督が神妙な顔をして近付いてくる。
「さ、さすが豹馬やな! 俺はやる思ってたで!」
おっとぉ?
まさか監督に気を使わせてしまったか。
ここは俺が大人の対応しなければ!
「いや、まぁ? 俺レベルになればこのぐらいはね! ようやく俺の打撃センスが開花したかって感じっす! お待たせしました!」
無理無理。だって今めっちゃ嬉しいもん。
謙遜に出来る程俺は大人じゃなかった。
「そ、そうか。まぁまぐれの話はええねん。次の回どうする? 点取ったし代わってもええで? まさかこの回で勝ち越しする思てなかったからなぁ」
おやおや? これは貶されてますかな?
まぁ調子に乗ってる自覚はあるのでいいんだが。
まぐれって言ってしまってるしな。
「いや、今日はこのまま行けるとこまで行きますよ」
「了解や。三井にもそう言ってくる」
ここはしっかり抑えないとな。
ホームラン打って気が抜けてるとか思われたら馬鹿にされるし。
そうこうしてるうちに、スリーアウトになってチェンジになる。
ってか、今日のうちの打線ブレーキかかってない?
俺が打てたからそんな凄いピッチャーじゃないと思うんだけど。
…自分で言ってて悲しくなるな。
「ぴぇー」
七回はヒットを打たれたものの、0に抑えて八回。
ツーアウトまでは順調に抑えたもののその後に二者連続四球。
体自体がテンション上がってる状態なのか、ボールが全部高めに浮く。
タイガは迷わずタイムを取り、伝令もやって来る。
「何やってんの?」
「面目ねぇ。思わぬホームランに体が舞い上がってる」
「慣れない事するからそういう風になるんだよぉ。素直に三振しとけば良かったんだ」
隼人が茶化してくるが、その言い方はひどくない?
慣れない事って…確かにホームランは高校に入って2本目だが打とうと思って打った訳じゃない!
俺だって当たると思ってなかったんだよ!!
「とりあえず! ツーアウトなんだし、ランナー無視で。走られても良いんだ。2人帰ってきてもまだ1点あるんだし。バッター集中で!」
嫌でもバッター集中でいきますよ。
なんたってホワイトホース君だからね。
全員が守備位置に戻り、白馬君を見るとかなり集中してる。
なんかオーラ見えてきそう。
初球ツーシームで空振り。
うむ。やっぱりストレートとほぼ球速が変わらないからか有効的ですな。
2球目はアウトローへナックルカーブ。
ランナーはスタートを切ったが、タイガは投げる素振りすら見せない。判定はボール。
3球目はインハイにストレート。
打球は詰まってファール。
こいつはまだ投げてないからな。
これで仕留めて勝ち逃げさせてもらう。
インコースへスイーパー。
白馬君はかなりのけ反っていた。
まぁ完璧に当たるコースから曲げてるからね。
俺の投げ方だと背中からぶつけに来てる様なボールだと思うだろう。
そして見逃し三振。
白馬君は思わず膝を着き、天を仰ぐ。
「んだらぁー!!」
俺はグローブを叩き雄叫びを上げてガッツポーズ。
高校に入って1番の強敵だった。
もう2度と戦いたくない。
現時点ではレオンよりも戦いたくない。
もうさっさとプロ行って下さい。
とりあえず俺が成長するまでは顔も見たくないね。
「よーし! 勝ち逃げ勝ち逃げ!! もう交代だし高校生活で会う事もないだろ! ざまあみろ!」
ベンチに戻ってタイガやみんなとハイタッチしながら上機嫌でアクエリを飲む。
うむ。うんまい。
む? なんかタイガがニヤニヤしてるな。
「ねぇ? 上機嫌な所申し訳ないんだけどあの人、まだ2年だよ?」
「え? マジ?」
「マジ。ご愁傷様。後一年頑張ってね」
俺は絶望した。
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