第168話 仕事人
「ちゃららーん♪ ちゃららららら♪ ちゃららーん♪」
必殺仕事○のメロディを口ずさみながらマウンドに上がる。
正直、打たれる気は全くしていない。
が、油断はしない。特にプリンスと一二三には要注意だ。
プリンスは俺の完全王子と名前が被ってるって事で絶対に抑えたい。
向こうからしたらとばっちりだけど、こういうのは重要なんだ。私怨100%なのは認めます。
一二三少年は徹底的に叩いておきたい。
辛いリハビリを乗り越えてでも、野球をやりたいぐらい好きなら、ここでボコボコにやられても這い上がってくるだろう。
悔しさをバネにして一層頑張ってもらいたい。
期待してる分厳しく。高校野球は違うんだぞというのを見せつけてやる。
なんか人気出そうだから、今のうちに叩いておきたい気持ちが100%なのは認めます。
しかし、まずは速水から。
あのクールな顔を悔しさで滅茶苦茶にしてやろう。俺はその顔を見る為に投手をやってるんだ。
初球。
キャッチャーをしてる父さんにサインを出して足を上げる。
インコースへのスラッター。フロントドアで厳しく攻める。
判定はストライク。かなり仰け反ってたけど、初めて見るなら仕方ない。
一応左殺しを自称させてもらってますからね。
2球目はインハイへのストレート。
たぶん150キロは出てないだろう。140キロ後半程度だろうが、完全に振り遅れて空振り。
中学生で140キロ後半を投げてくる子って居るのかな。居たとしても稀だろうし、速水は新体験をしてる事だろう。
3球目はアウトコースへのストライクからボールになるナックルカーブ。
見逃せばボールになる球だったが、速水は完全に焦ってしまっている。
簡単に手を出してしまい、空振り三振。
「まだまだ尻の青いガキには負けんわい」
歳は一つしか変わりませんが。気分の問題だよね。
速水は呆然とした表情でベンチに戻っていく。
悔しさでめためたにする事は出来なかったけど、その表情も悪くない。
早速脳内麻薬が出てきましたよ。
続く打者はプリンスこと王子。
こいつは金子と対戦した打席を見た感じ、バットコントロールは中々なものだ。
ギャップのあるバッティングフォームをしているが、芯を食えばネットまで届くパワーも持っている事だろう。
「プリンスの称号は俺のもんだ」
初球。
アウトコースへのストレート。
様子見をする為にボールから入ってみた。
これを王子は見送る。判定はボール。
見極めたのか、手が出なかったのか。ちょっと分かりませんな。一球無駄にしました。
2球目。
次もアウトコースへ。球種はスラッター。
見極めたのか確かめる為に、先程とは違って今度はストライクからボールになるコースに投げ込む。
そして王子は空振り。うむうむ。ストレートと勘違いしてくれたみたいだな。
大体のコース判別は出来てるっぽいな。やっぱりこいつは要注意だぜ。
3球目はインローへのストレート。
所謂、クロスファイヤーってやつだな。
俺はサイドスロー気味だから、右打者にはかなり刺さるだろう。
王子はこれを打ったものの、完全に詰まったピッチャーフライ。
俺は難なくキャッチして対戦終了。
「はい。王子の称号は俺の物ね。俺に勝つまで俺の物だからね」
大人気ない先輩ムーブを見せつけた。
勝負はいつでも受けて立つぞ。
続いてぶんぶん丸の剛元。
言ったら悪いけど、こいつはもっと変化球の対応をなんとかしないと話にならない。
父さんに魔改造してもらって下さい。ストレート待ちだけじゃ、高校野球ではきついですよ。
それは俺が証明してます。
って事を分からせる為にナックルカーブ3球で仕留めてやりました。
苦手な球種を徹底的に攻める。卑怯と言うなかれ。これが勝負というやつなのです。
公式戦で卑怯なんて言ってられないしね。
勝つ為には反則以外はなんでもやらないと。
「さーて、後はラスボスだけだな」
満面の笑みで打席に入ってくる一二三少年。
笑顔は俺の代名詞なんだけど? これは絶対に負けてやる訳にはいかなくなったな。
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