第318話 VS桐生6
二回表の龍宮は三者凡退に終わった。
それでも速水とウルの二人で20球粘ってる。尾寺君の球数は二回にして60球を超えた。こういうのが後々効いてくるんだ。
そして二回裏。
俺の助言通り一度もバットを振らずに三振したキャプテンは絶好調。4番のドワイトを2球で追い込んでいる。
「やっぱりそうだよな」
「うん。ドワイト君は速い球が苦手みたい」
決勝で桐生と当たる前に、データの分析とかもしっかりやっている。で、地方からの打撃成績を見る限り、ドワイトが得意にしてるのは変化球。うちの剛元とは逆である。
変化球は上手に捌いて打ててるみたいだけど、ストレートは詰まらせてる事が多いんだよね。なんか意外だけど。
外国人ってストレート系には強くて、変化球に苦戦するのが多いイメージだからさ。
まあ、とにかく、その情報を確かめる意味も込めてストレートを2球続けて投げて追い込んだ訳だ。確かに若干振り遅れてるようには見える。特に、今日のキャプテンのストレートは凄いからね。
そして3球目。
高めの釣り球のストレートでドワイトは空振り三振に倒れた。徹底的にストレート攻め。キャプテンとタイガは容赦ないね。
まあ、これが勝負ってもんよ。相手の弱点はネチネチと攻めるべし。
その後、5番.6番を内野ゴロに打ち取って、二回裏は終了。今日のキャプテンは絶好調だぜ。これは俺の出番はないかもしれんな。
☆★☆★☆★
「なんやあれ。シャレならんな」
「あのスピードとキレでコーナーにズバズバ投げられたら手でぇへんで。舐めとったつもりは一切ないけど、ちょっとここまでとは思ってへんかったわ」
二回裏が終了し、桐生側のベンチは少し動揺していた。予想以上に三井の出来が良いのだ。なるべく早く三井を攻略して、三波を引き摺り出す。
後半に万全な状態で三波に出てこられると、なす術もなくやられてしまうというのが、桐生側の考えだった。
少しでも早く三波を登板させて、体力を削る。バテて来たところでようやく勝負になると考えていたのだが。
「あそこまで化けるとはなぁ」
桐生の監督もお手上げである。春のセンバツでも当たったが、成長幅が大きすぎる。このままでは、三波を引き摺り出すどころか、三井一人にやられてしまいそうだ。
「次は打ちます」
「任せてくだサーイ!」
大鰐とドワイトはまだまだやる気満々。勿論、まだ序盤の二回が終わったところだ。ここからやれる事はまだまだたくさんある。
「狙い球は絞っていこか。各々得意なボールだけ待っとれや。腹括ってこ。こーへんかったらごめんなさいや」
監督はそう言って、選手達を守備に送り出す。
「せやけどなぁ。こっちも問題やで。まさかうちが春にやった事をやり返されるとはな」
エース尾寺の球数問題は深刻である。これから三回だというのに、少し疲れが見え始めてる。甲子園の過密な日程も相まって、バテるのが早い。
下手したら五回も持たないかもしれない。
(一応控えには準備させとるけど…。尾寺には劣るからなぁ。このままやとこっちが三井を打ち崩す前に試合が決まってまうで…)
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