第44話 VS三高2


 審判が集まってるから中止かなと思ったけどやるらしい。

 もー怪我したらどうすんだよ。


 結局、四球と内野安打でランナーを出すも無得点。

 試合は雨足が強い中、四回表を迎えてとうとう試合が動いた。


 先頭バッターにツーベースを打たれて、その後送りバント。

 ワンアウト3塁でフェンスギリギリまで運ばれる犠牲フライ。

 ツーアウトでランナーは無くなったものの、先制されてしまった。


 「うむぅ。思ったより手堅いな。もっとゴリゴリ押してくるもんかと」


 先輩を強行策で打ち崩すのは難しいと思ったかな?

 なんとしてでも先制点が欲しかったのか。


 その後はしっかり抑えて戻ってきたが、先輩の表情は険しい。


 「くっそ〜! ボールがすっぽ抜ける! あのツーベースは最悪だなー!」


 三井先輩は珍しくご立腹の様子。

 これだけ雨が降ってたら、ロージンもあまり意味ないよねー。


 「まだ一点! たった一点ですよー! 相手もこの雨で失投があるはずです! 見逃さず仕留めていきましょー!」


 とりあえず雰囲気が暗いので周りを盛り上げる。

 よく考えたら先制されるのって、俺達が入学してから初めてなんだよなー。

 うーむ。困った。

 最小失点で切り抜けられたし、まだ中盤。全然チャンスはあると思うんだが。


 そんな事を思ってると、裏の先頭バッター、レオンから快音が聞こえた。

 高めに浮いたストレートを一振りで仕留めての同点ホームランである。

 球速表示をみると161キロと出ている。


 「ほんとに打ったな、あいつ」


 雨の中、淡々とダイアモンドを一周してベンチに戻ってきたレオンとハイタッチ。


 「うぇーい! 振り出しでーい!」


 「ナイバッチ!」


 「ヤマが当たって良かった」


 柄にも無くホッとした表情のレオン。

 でもこれは、大きいぞ。

 点取られた後のすぐの攻撃で追いついたのは相手も相当なダメージなはず。

 このまま畳み掛けたいところ。



 しかし、相手は名門。

 その後の打者をしっかり抑えちゃんと立て直してきた。

 

 そこからは七回まで試合が動く事なく、ゲームは進んで行った。

 雨も小雨になり中止にはならなそうだけど、両者共にすっぽ抜けが目立つ。

 球数も増えてきてこれは延長も見越してブルペンで肩を作るか、なんて考えてた時にそれは起こった。


 ヒットと四球でワンアウト1.2塁。

 三井先輩が投げたストレートを相手バッターはタイミングばっちりに捉えて、ピッチャー返し。

 投げた体勢のまま、残っていた三井先輩の軸足にボールが直撃した。

 打球はタイガが処理したものの、内野安打。

 ワンアウト満塁の大ピンチである。


 そして、三井先輩は蹲って倒れ込みそのまま起き上がる事が出来ない様だった。

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