第230話 紅白戦7


 「ふぅ」


 大丈夫でした。

 しっかりアウトコースへのボールで空振り三振してきました。

 いやぁ、ぶつけられるんじゃないかとヒヤヒヤしながら打席に入ったもんだからさ。

 ほら、中々踏み込めなくてね? だから空振り三振しても仕方ない。ちょっとへっぴり腰だったかも? なんかグラウンドに失笑が聞こえた気がするけど気のせいだろう。三振はいつもの事だしさ。


 ささっ。気を取り直して七回表いきましょう。

 7番の一二三少年から。大浦の指導で覚醒した期待のホープ。さぞかし天才なんだろう。 

 しかし、俺ちゃんは負けません。


 ストレート三つで空振り三振。

 一二三少年は信じられない様な顔をしている。

 くはははは! これが先輩というものだよ。


 「いや、自分でも怖いほど絶好調だな」


 続く速水、ミズチをセカンドゴロ、三振でこの回も三者凡退で終わらせる。

 どうだよ。最強龍宮打線。過去一と言ってもいいほど絶好調な俺を止める事は出来るかね。

 まぁ、まだレオンと戦ってないからね。まだデカい顔は出来ないけど。次の回が正念場かね。


 が、ミズチも負けていない。

 2番から始まる好打順だったんだが、向こうもきっちり三者凡退で終わらせた。

 4番の剛元が良い当たりを飛ばしてたんだけどな。残念ながらウルの守備範囲。あいつ、どれだけ守備範囲広いんだよ。


 さてさて八回表。

 打順は1番のウルから。レオンに回るからといって決して油断出来る打者ではない。

 ってか、こいつをランナーに出すとマジで面倒なので。しっかり抑えさせてもらう。


 ストレート、チェンジアップ、ツーシームで空振り三振。バットに当てられると万が一があるからな。ここは魔球で抑えさせてもらった。

 俺から打てないんじゃ大天使神奈は渡せんぞ? 修行して出直してきたまえ。


 「で、タイガか」


 こいつには思考回路がバレてるんだよなぁ。

 いつも通りの配球なら読まれそう。かといって、それを逆手に取って意表をついてもな。それを狙われてそうな気もするし。


 初球。

 インローへのストレート。

 俺は大体アウトコースから入る事が多いから、とりあえずインコースにしてみました。

 が、しかし。綺麗に合わせられた。


 「ガッデム!!!」


 センター前へのクリーンヒット。

 レオンの前にランナーを出しちまったぜ。

 インロー狙われてたのかねぇ。狙われてたからといって簡単に打てるボールじゃないと思うんだけどなぁ。多分150キロ超えてたよ? てか、今日はストレート全部150キロ超えてると思う。

 それぐらい球の走りが良いんだよ。


 そして3番の魔王レオン。

 シューベルトが聞こえてきそうだ。

 すっげぇ威圧感。大浦とはまた別種な感じだな。

 ピリピリと肌を切り裂きそうな感じ。


 「ここでラスボスか」


 しかも次は大浦、隼人と続く訳だ。

 つくづく罪深い打線だなと思う。

 味方だったら頼もしい事この上ないんだけど、敵に回すと本当に恐ろしいや。


 しかしである。

 プロに行ったらこんなのザラだろうし、メジャーも凄いんだろう。ここで怖気つくわけにはいかない。勇者豹馬。魔王退治してやりますぜ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る