第183話 気を取り直して
電車に揺られる事15分。
その間は渚ちゃんから話の概要をネタバレにならない程度に聞いていた。
タイトルからは想像できないぐらい、純愛物語らしい。ちょっとまだ信じられない。
そしてやってきましたT○H○シネマズ。
渚ちゃんには申し訳ないけど、なるべく後ろの席を確保してある。
俺がでかいから前に座ると迷惑になるんだよね。
これは授業中にマリンに言われて証明している。
いつも後ろの席だしね。俺を壁にして寝たりしてるけど。
「ポップコーンとか買う?」
「買いましょ〜。映画にポップコーンは欠かせません〜」
激しく同意。俺達相性バッチリだな。よし。結婚しよう。……すみません。調子に乗りました。
その後ポップコーンとジュースを買っていざ上映。なんかデートっぽくなってきたな。
「感動しました〜! ○○君が事故にあった時は思わず泣いちゃいましたよ〜!!」
「そ、そうね」
全然話を理解出来ませんでした。
終始意味が分からなかった。でも、一緒に見てた他の人とか渚ちゃんはかなり興奮してるんだよな。
俺がおかしいんだろうか。映画を見ながら表情を一喜一憂させてる渚ちゃんが美しかったなとしか感想がないんだけど。
やばいな。この後、ご飯に行く予定なんだけど。
映画終わり定番の、どこが良かったトークについていける気がしない。話を逸らさないと。
「ご飯はどこに行きますか〜?」
「一応、この辺の候補はリストアップしてありますぜ!」
しっかり下調べ済みですよ。あっさり系からがっつり系まで網羅しております。
って事でスマホをぽちぽちとして、この辺の飲食店一覧を見せる。
「うわ〜。どれも美味しそうな場所ばっかりで目移りしちゃいます〜。どこを選んでも良いんですか〜?」
勿論学生デートらしく、リーズナブルなお店に限定してある。俺と渚ちゃんは両方ともそれなりに稼いでるんだけど。
俺は前世知識を利用して堅実に株を転がしている。あんまり覚えてないけど、有名所は抑えてるからね。
渚ちゃんは読者モデルとして。
この前も中高生向け雑誌の表紙を飾っている。
勿論、買った。そして神奈に取られた。もう一冊買いました。
中高生にかなりの人気を誇っていてSNSのフォロワーは俺以上だ。甲子園優勝したのに。
「ここにします〜!」
「およ? 予想外」
「お肉が食べたかったんですよ〜! サラダバーもありますし〜」
渚ちゃんが選んだのは、がっつり系のステーキ屋さん。お手頃なお値段で食べれて、サラダとスープバーがある。
学生のデートに使うのにも割と人気な場所だ。
って事でいざお店へ。
時間は19時ぐらいって事で、そこそこ忙しそうだったけど普通に入れた。学生さんもチラホラと見受けられる。
「やっぱり見られるな」
「慣れてて良かったですね〜」
席に案内されるまでに見られること見られること。俺は日本人にしてはかなり大きいし、渚ちゃんは女神だし。
幸い二人とも見られる事に慣れてるから気にしないけどさ。
「俺、このサーロインステーキ300g。ご飯大盛りにしよう」
「私はそれの150gにします〜。ご飯も小で〜」
店員さんにパパッと注文して、サラダを取りに行く。そしていよいよ恐れていた時間だ。
「パン君はどのシーンが良かったですか〜?」
「う、うーん」
話を理解出来なかったので、渚ちゃんを見てましたってのはキモすぎるよな。
一体どうやって誤魔化したもんか。
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