第182話 フライング
冷や汗が止まらない。
さっきまで幸せの絶頂だったのに。
「? どうかしましたか〜? 顔が真っ青ですよ〜?」
「うん。どうかしてる。ちょっと待ってね」
不思議そうに首を傾げる渚ちゃんもビューティフル。いや、そうじゃなくて。
ちょっと待ってね。状況を整理してるから。
「えーっと? 渚ちゃんは俺が今日告白する事を知ってたのかな?」
「はい〜。昨日の夜に兄さんから聞きました〜。だから今日はとっても楽しみだったんですよ〜」
ふむん。とりあえずレオンをぶっ殺すのは確定としてだね。ボコボコのボコにしてやる。勝てるかどうか定かではないが。
なんでフライングしてるんだよ。流石にこれはルール違反だろ。禁忌の一撃だよ。
それはさておきだ。これからの俺の行動をどうすべきか。予定とは違うがこのまま告白フェーズに行くのが正解なんだろうか?
流石にフライングダッチマンはシミュレーションしてないんだが。
「んんっ。えーっとですね…」
え? この駅前で告白するの?
周りに結構人がいるんだけど? こっちに注目はしてないだろうけど、流石に恥じらいが…。
甲子園の決勝マウンドなんかよりよっぽど緊張するんだが?
「パン君頑張って下さ〜い!」
そして年下に応援される始末。
はっきり言ってダサすぎである。
ええい! 男は度胸! やってやるぜ!
「好きです! 付き合って下さい!」
「はい。喜んで」
気合いを入れ過ぎて声が大きくなってしまった。
駅前でそんな事をしたもんだから当然注目を集めてしまって…。
「ひゅー! 青春!」
「良く言ったぞ!!」
祝福されてるのやら茶化されてるのやら。
いや、ありがたく受け取りますけども。
「あ、ありがとうございます」
俺は周りの野次馬さんにぺこぺことお辞儀をしつつ、渚ちゃんを見る。
「うふふふ〜」
あかん。女神。美しい。俺は今世界で一番幸せ者ではなかろうか。正直、甲子園で優勝したより嬉しいんだが。
そんなこんなで、予想外の事もありましたが。
三波豹馬。彼女が出来ました。
「ふぅ〜。やっと抜け出せた。時間ギリギリになっちゃってごめんね?」
「いえいえ〜。楽しかったです〜」
未だに集まっていた野次馬さん達をあしらい、なんとか電車へ。
一応、今日は映画デートって事になってるんだ。
ここからは気を取り直してデートと洒落込もう。
そう! カップルとしてね!!
「今日の映画、楽しみにしてたんですよ〜」
「なんか有名な少女漫画の実写化なんだよね?」
「はい〜。漫画でずっと見てて〜。面白かったんですよ〜」
今日の映画チョイスは渚ちゃんだ。
既に上映されて結構立ってるらしいが、今でも結構席が埋まってるらしい。
一応ラブロマンスって事で、映画でムードをぐんと上げてそのままの流れで告白してってのを予定してました。
レオンのくそったれに出鼻を挫かれましたが。
まぁ、結果オーライなんだけどさ。
それにしても。
『彼女は膵臓を愛し過ぎている』
一体どんな話なんだ。タイトルだけでは想像も出来ないんだが。
最初にラブロマンスって聞いてなかったら、ホラーと勘違いしちゃうぞ。
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