第181話 女神降臨


 輝夜さんと楽しく話した翌日の月曜日。

 昨日の夜は中々寝付けませんでした。

 色々なシミュレーションをして予習はバッチリ。


 「なんか今日ずっとソワソワしてない?」


 「そ、そう? 緊張してるのかも」


 放課後にデートする事になってるので、それまでは学生らしく授業を受ける。

 後ろの席のマリンが不思議そうに声をかけてきたけど、今日は授業に集中出来る気がしませんね。


 「緊張? あ、そういえば今日デートだったわね」


 「男を見せてきます。アドバイスとかあります?」


 授業中って事でコソコソと話しながら、女目線からのアドバイスを所望する。

 成功確率が上がるなら賄賂だって辞さない覚悟ですよ、豹馬君は。


 「いやーどうだろ? 渚ちゃんとそこまで仲が深い訳でもないし…。因みにレオンは知ってるの?」


 「知ってる筈。今日は殺気がやばいからな」


 チラッとレオンの席の方を見る。

 真面目に授業を受けてるけど、荒ぶる殺気を振り撒いてる。周囲の席の奴らが可哀想なくらいだ。


 「あははは。成功しても失敗しても地獄だね。まぁ、小細工無しで正面から行くべきじゃない? 気持ちをそのままぶつければ良いと思うよ」


 「これが彼氏持ちの余裕。面構えが違うぜ」


 「タイガが告白してきた時は可愛かったよ? 好きです。付き合って下さいの言葉を言うまでに三時間は掛かったね。可愛いかったけど。うん。可愛いかった」


 「何故惚気を聞かねばならぬ。糖度の高い話は間に合っております」


 「私達のラブラブっぷりを参考にしたまえ」


 参考に? まぁ、仲良くやってるなとは思うけど。空気感がラブラブというよりは熟年夫婦なんだよね。阿吽の呼吸と言いますか。必要最低限の会話で分かり合ってる感じ。

 まぁ、憧れるよね。俺はもっとラブラブしたいけど。



 その後も授業になんとか集中しつつ、ソワソワした気持ちを抑える。

 昼休みでレオンと一緒にご飯食べてる時はやばかったね。顔が鬼みたいだった。

 それでいて俺に何も言ってこないのが怖い。人殺しと言われても信じられる顔をしていたぞ。


 「やっぱりお義兄さんって言ったのが不味かったか? 調子に乗りすぎたかも」


 授業が終わってから一旦帰宅して勝負服に着替える。普通に雑誌を参考にしたオシャレな服だけど。

 俺、身長がでかいから服を選ぶのにも一苦労なんだよね。

 将来、でかい人専門の服屋さんでも立ち上げてやろうか。


 「うぅ。緊張するぅ」


 待ち合わせの駅前でソワソワしながら待つ。

 でかいからかなり目立つだろう。

 2mの巨人が駅前でソワソワしてるんだ。職質されても文句は言えない。

 でも俺はそんな事気にならないぐらい緊張してるんだ。


 一応、デートして最後の帰る時に告白する予定なんだけど。

 初っ端に告白して振られたらデートどころの話じゃなくなるからね。


 「正面突破だ。好きです。付き合って下さい。この二言を言うだけ。なーに簡単なミッションだ」


 ぶつぶつと独り言を呟いてると、少し離れた所で女神を発見した。

 とても美しい。天使から昇格したのか。


 「パン君お待たせしました〜」


 「い、いや全然! 俺もさっき着いたとこ!」


 尚、40分程待った。

 俺がテンション上がりすぎて早く着きすぎただけなんだけど。まだ集合時間前だし。


 「なんか今日滅茶苦茶可愛いね? いや、可愛いってか美しい。いや、いつもの事なんだけど」


 「えぇ〜? 本当ですか〜? ありがとうございます〜」


 あぁ。幸せ。もう喋ってるだけで幸せ。

 今の俺は相当キモいんじゃないかな。大丈夫だろうか?


 「今日はパン君が告白してくれるって聞いて〜。楽しみにして気合いを入れてきたんですよ〜」


 「なるほど。それならその美しさにも納得だな!」


 「えへへ〜。ありがとうございます〜」


 ……………? なんかおかしくない?

 なんか今、渚ちゃんおかしな事言いませんでした? 俺の聞き違い? テンション上がり過ぎて幻聴が聞こえたのかな?

 

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