第295話 VS正徳1


 試合当日。

 完璧な体調で目覚めて、入念に準備をして三波旋風を巻き起こす準備はバッチリである。


 夏の甲子園初マウンド。

 試合時間が近付くにつれて、テンションが爆上がりしていく。


 タイガが既にテンションが上がりきってる状態の俺を見て呆れた感じで見てくる。


 「それで最後まで持つの?」


 「当たり前じゃん。三振を奪えば奪うほど青天井で上がっていきますぜ」


 脳内麻薬全開で毎回壮大で且つ繊細なSHOWTIMEを見せてやるよ。あ、これパクリね。動画サイトで見ました。


 あ、そうだ。ついでにこれも動画サイトで見たメジャーリーガーのサイン交換も今日の試合でやっちゃおうかな。中々癖が強くて面白かったんだよね。


 って事でタイガと相談。


 「ええ…。パンが笑われるのは良いけど、こっちまで恥ずかしくなるじゃん」


 「確かに見てる分には面白いけど、あの人だって笑かす為にやってる訳じゃないと思うよ?」


 あれがきっとルーティンになってるんですよ。ほんと、ルーティンは人それぞれだからね。他人から見たら理解されない行動も多々ある。俺は特にないけどね。試した事はあるけど、どれもしっくりこなかったんだよなぁ。





 そして試合が始まる。

 龍宮は後攻って事で一回表から俺の出番だ。


 「観客の声援が凄かったなぁ」


 「ねぇ、ほんとにやるの?」


 「とりあえず初回はやる」


 スタメン発表されて、俺の名前が呼ばれた時の声援は凄かった。何故か笑いが起こってたのはご愛嬌という事にしておこう。愛されてるってポジティブに考えてます。


 タイガは俺に考え直すように言ってきたけど、とりあえず初回はやらせてもらう。これで打たれたら即ヤメするけどね。遊んでる訳じゃない。これがもしかしたらしっくりくるかもしれないじゃんって事で。


 まあ、ぶっつけ本番の甲子園で試す事ではないが。


 「いくぜ」


 先頭バッターがバッターボックスに入ったのを確認して、一塁方向を見つつ大きく息を吐き出す。息を吐き切ったところで、ギュンとタイガの方を見てサインを確認。


 サイン交換を終えて、投球開始。

 軽く体を捻ってなんちゃってトルネード。

 そこからサイド気味に投げる。


 ボールはタイガが構えたところに良い音を鳴らしてバシッと決まる。自分でも惚れ惚れするようなストレート。うむ。絶好調である。


 審判のコールはストライク。

 球速掲示板には153キロと表示されていた。


 2球目。

 同じように一塁方向を見ながら大きく息を吐き出してギュン。フーッと吐いてギュンである。


 で、投げたのはチェンジアップ。

 バッターは空振り。良いブレーキが効いてるぜ。


 3球目。

 またもやフーッと吐いてギュン。

 観客からは既に笑い声が聞こえる。思い付きでやったけど、結構しっくりきてますね、ええ。


 投げたのはツーシーム。

 バッターは見逃したけど、判定はストライク。見逃し三振である。


 やべぇ。久々の先発だからか、既に脳内麻薬がドバドバきてる。今日の俺はちょっとヤバいかもしれん。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今回豹馬がやったのは元メジャーリーガーのフェターズって選手のサイン交換です。

 YouTubeで見て癖すげぇって思ったんですよね。作者的には愛嬌があって可愛いと思ったんですが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る