第296話 VS正徳2


 フーッと吐いてギュン。ズバーン。

 フーッと吐いてギュン。ズバーン。


 観客からはかなり笑われてるけど、豹馬君はかなり絶好調である。


 先頭バッターから三振を奪って、フェターズ投法を継続。2番、3番からも三振を奪って三者連続三振という完璧な立ち上がり。


 マウンドからベンチに戻る時はかなりの拍手をいただいた。盛り上がったようでなによりです。


 「パン! 次の回からやめてよね! 審判も笑いを堪えてたよ!」


 「え? マジ? 予想外にしっくり来たから続けようと思ってたのに」


 「ダメ! こっちが恥ずかしい!」


 タイガさんがプンスコしながら、ネクストバッターサークルに向かって行った。ダメみたいだ。じゃあ次はキンブレルとかにしようかな。あれも中々癖が強い。


 一時期日本のプロ野球選手が真似したりしてたよね。名古屋の選手だったと思うけど。

 あれ、カッコいいもんなぁ。メジャーではバックネット裏で観客に煽られたりしてたけど。


 それはさておきだ。

 一回裏の龍宮の攻撃。


 今日のスタメンは一回戦と同じなので、1番はウル。早速7球粘って四球で出塁した。


 相手の先発は左の本格派。

 MAX150キロでフォーク、スライダー、カーブの変化球がある、普通にドラフト候補に名前が上がってる良い選手である。


 高校生の時点でサウスポーが150キロって、結構おかしいからね。俺がぽんぽこ投げるからちょっと感覚がバグってるかもしれないが。それにスライダーが中々キレてる。左打者は苦労するかもしれないな。


 ウルは粘って出塁したけど、スライダーを捉えてる訳じゃなかった。まあ、3番には魔王レオンが居るんだが。あいつは左右関係ないからね。


 2番のタイガはバントの構えをせずにヒッティング。内野の間を抜ける事はなかったが、進塁打にはなった。


 ワンアウト2塁で迎えるはレオン。


 前回の試合では出番がなかった事もあって、観客はかなり盛り上がっている。ホームランを期待されてるんだろうなぁ。


 初球。

 インコースへカーブ。

 中々に攻めたリードだとは思うが、レオンは見逃してストライク。


 2球目。

 アウトコースへのストレート。

 これは外れてボール。


 3球目。

 アウトコースへのフォークだったが、これはワンバウンドしてキャッチャーが弾く。すかさずウルが三塁に進塁した。


 4球目。

 インコースへスライダー。

 俺のスイーパーと同じ感じで、打者の背中から曲がってくるようなキレのある変化球。

 レオンは打ちに行ったものの、打球は一塁線に切れてファール。


 レオンは首を傾げつつ、何度か素振りをしている。


 「レオンが捉えれないって、やっぱりあのスライダーは良いボールなんだな」


 俺のスイーパーはポカスカ打つくせに。なんか負けたみたいで腹が立ちますよ。レオン君には是非とも打ってもらわないと。


 そう思ってたら5球目。

 アウトコースのストレートをレオンは軽打した。合わせるだけのようなバッティング。それがサードの頭を越えてレフト前ヒットになった。


 三塁ランナーのウルが帰ってきて1点先制。

 それは良いんだけど…。


 「あいつカットしようとしてなかった?」


 「多分。スライダーを待ってたんだろうね。で、カットしようとしたら、普通にヒットになったんだと思う」


 この打席でスライダーを叩いておきたかったんだろう。まあ、結果オーライと言ったらそれまでなんだけど。塁上で憮然とした表情をしてるレオンを見るに、あまり納得してなさげ。


 まあ、なんにせよ先制は先制である。

 レオンには次の打席に期待するとしよう。

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