第77話 次の相手


 「ほな、ミーティング始めるでー」


 あー、眠い。8時間は寝たのにな。

 これも全部ロビカスが悪い。


 「次の相手は秀徳や。ま、普通に強いわな」


 まあ、3回戦も突破すると、強豪校としか当たりませんよね。


 「注意すべきは、4番でエースの若松イライジャ。日本人とアメリカ人のハーフや」


 「え、でかっ」


 「パンより大きくない?」


 秀徳のキープレイヤーは若松イライジャ君。

 名前がとてもかっこいい。

 右投げ右打ち。

 身長が211cmと、俺より10cm以上大きい。

 高校1年の頃には、身長の伸びが止まってたらしく、筋トレもガンガンしてるんだろう。

 俺の針金ボディとは大違いで、しっかり筋肉がついた恵まれた体をしている。


 「今時珍しい、まともなオーバースローで投げてくるんやけど、映像で見ても角度が凄いんや。地面に叩きつける様に投げてきてる」


 どひゃー! すっごい球!

 キャッチャーミットに収まった時の音が凄い。

 球速は150キロ前半しか出てないけど、滅茶苦茶重そう。


 「うわっ。この人、恵まれた体で慢心せず努力もちゃんとするタイプか」


 「天狗になって、ストレートでがしがし押してくるタイプなら御し易かったのにな」


 変化球も一級品ですな。

 カーブ、スライダー、フォーク、シュート。

 基本に忠実って感じがプンプンする。


 「なんでこれで話題になってないんだ?」


 確かに。

 俺も今日聞くまで全然知らなかった。

 こんな投手有名にならない方がおかしいだろ。


 「まあ、怪我やな。中学3年の春にトミージョンして、ひたすらリハビリしてたらしいわ。休んでる間にしっかり体作ったんやろなあ。本格化し始めたのが、今年の秋からって訳や」


 えー、滅茶苦茶厄介じゃん。

 うーん。打ち崩すのに時間が掛かりそう。


 「で、打つ方は完璧なアーチストタイプやな。アッパースイングで、多少ボール動かしても無理矢理持っていけるパワーはあるし、高目が苦手って訳でもない。ミート力はそこそこってとこやな」


 これ、金子と相性最悪だろ。

 可哀想に。


 「んで、イライジャのワンマンチームみたいに見えるけど、他のメンバーの平均値も高い。一昨年ぐらいに練習を見に行った事あるけど、だいぶ先進的な練習はしてたな」


 なるほどなるほど。

 イライジャ君も良い指導者に巡り会えて、ここまでの怪物君に育った訳だ。


 「まあ、こんなとこやな。正直、金子にはきつい相手になるやろうから、豹馬は早めに準備しといてくれ。バッター陣は、今から対策練習やな。マウンドに土を盛って、擬似的にイライジャを体験させてみるけど、実際相対してみんと分からん事もあるからなあ。こればっかりは頑張ってくれとしか言えんわ」


 うーむ。

 次の戦いは一筋縄ではいかなそうだなー。

 

 

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