第133話 ニュース


 完全試合を達成した日の夜。

 俺はテレビの前を陣取り、甲子園の特番を今か今かと待ちわびていた。

 いつもなら寝てる時間だし、前回もここで見た時は目がしょぼしょぼとしていたが、今日はギンギンである。


 「始まった!!」


 周りでみんなも見てるけど、生暖かい目で俺を見守ってくれている。

 こういう時だけ変に優しいのもちょっと困る。

 なんか恥ずかしいじゃんね。



 オープニングソングが流れて、男女二人のキャスターが映し出される。


 「皆さんこんばんはー」


 「こんばんは!」


 春のセンバツだからか、ちょっと尺は短めなんだけど、それでも嬉しい。

 地方でも映ってたけど、全国的に放送されるのは初めてじゃなかろうか?

 シニアのW杯も全国放送じゃなかったし。

 あ、耳を塞ぐポーズで一応デビューしてるか。


 「本日も熱い戦いが数多く行われましたね!」


 「新たな記録も達成された試合があって目が離せませんでした!」


 「それでは早速、本日の試合を振り返っていきましょう」


 そして映像が切り替わり、今日の試合のハイライトが流されていく。

 キャスターの人が解説をしつつ、試合を振り返り、いよいよ龍宮高校の出番。


 「そして、本日の第三試合。龍宮高校対神町高校の一戦です」


 「龍宮高校は大会前から色々と話題になっていましたねー」


 「高校球児らしくないと、一部から批判されているようですね。しかし、龍宮高校はその声に屈する事なく今日の試合に臨みました」


 「お互い打力のあるチームと前評判にありましたが、果たして今日はどういう試合展開になったのか。それではどうぞ」



 先攻の龍宮高校からの攻撃のシーンが流れる。

 今大会注目のレオンのタイムリーから始まり、大浦のタイムリー、そして隼人のホームランが大々的に放送される。


 「いやー、前評判通りと言ったところですね。初回から打線が大爆発。一気に4点を先制します」


 「龍宮高校はホームランを打てる打者が多いですねー」


 チラッと隼人を見てると、いつも不機嫌そうな顔をしてるのに、今はにやにやを抑えようとしてるのか、ちょっと面白い顔になっている。

 コソッとその顔を写真に撮っておいた。

 勿論、後で全力でおちょくる所存だ。


 「そして、4点を貰った龍宮高校の先発は三波君。父が日本やメジャーでも活躍した選手という事で注目を集めていました」


 「かなりプレッシャーもあったと思うんですけどね。果たして、どんなピッチングを見せてくれたのか」



 「むふーっ! きたきたー!」


 「ここまで自分の事で喜べるのって、もはや才能だよね」


 喜んで何が悪いんだよ。

 隼人みたいに隠そうとするからおちょくられるんだぞ? 堂々と喜んでおけば良いのさ。


 「三波君が投げた初球。そのストレートがなんと153キロ!!」


 「私も現地で見ていたんですが、これには驚きましたねー。甲子園も凄い歓声でした」


 「春先でまだ球速が出にくいと言われている中での大台突破ですからね」


 

 わはははは! なんて気持ちいいんだ!

 スポーツ選手って最高だな!!

 勿論、結果を出さなきゃ地獄なんだけど。


 「そして三者連続三振という最高のスタートで初回を終えます」


 「圧巻のピッチングでしたね。三波君は試合前に一部心無いファンの方々から親のお陰でベンチ入りをしたとも言われていたそうですが、完全に払拭出来たと言ってもいいでしょう」


 そういう事は言わなくてもいいのよ?

 メンタルが豆腐の奴なら、それを言われるだけで崩れたりするんだから。

 まぁ、俺のメンタルは超合金で出来てるから平気なんだけど。


 「やーいやーい! 親の七光りー!」


 「おちょくり方が小学生なんよ」


 マリンが半笑いでおちょくってくるが、これぐらいの距離感の方がやりやすいよね。

 親の恩恵にあやかってるのは事実だし。

 練習環境とか、高校球児にしては破格だろう。

 恩返しする為にも、早くプロに行って活躍しないとな。



 その後もおれの奪三振ショーが映像で流されて、途中でウルやタイガのタイムリー、大浦のホームランが流されて、更に盛り上がる。

 レオンは今日ホームランが無かったからむすっとしてるけどね。

 フェンス直撃のツーベース二本も、後50cm違ったらホームランだったのにね。

 本人的に打ち損じて不満なんだろう。

 木製は芯が小さいからなぁ。それでフェン直まで持って行ってるのがおかしいんだけど。



 「そして、運命の最終回。ここまでヒットも四球も出さずにツーアウトまでやってきました」


 「長い歴史の中で完全試合が達成されたのは二回のみ。三人目に名前を刻む事は出来たのでしょうか」


 そして最後の打者をキャッチャーフライに打ち取りゲームセット。完全試合達成。


 「九回を投げて102球21奪三振の完全試合達成です!」


 「凄いですよね! 現地で見て涙が出そうでした!! 更に春の甲子園の一試合での三振記録も同率一位なんですよ!!」


 「素晴らしい。この一言に尽きますね。逆境を跳ね返しての大記録達成。おめでとうございます」



 ありがとうございまーす!!!

 きたね! 豹馬フィーバーの流れが!!

 明日は宿舎周りが凄い事になってるのでは!?

 サインの練習はバッチリだぜ!!


 俺はそんな事を思いながら、気持ちよく布団に入って就寝した。

 あ、因みに俺のバッティングの映像は全く流れませんでした。

 テレビ局の人の優しさでしょうか。

 涙が出そうですね、はい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次回は掲示板です。

 甲子園が終わるまで掲示板回な無しにしようと思ってたんですけどね。

 別作品で溜めすぎて苦労したので。

 間に挟む事にしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る