第28話 VS創英高校5


 七回表。相手はクリーンナップからの攻撃。


 ☆★☆★☆★


 創英高校の3番内海は焦っていた。

 いや、内海だけでなく、創英高校野球部全員が。

 龍宮高校が強いのは知っていた。

 八王学園がコールド負けしたのだから当然情報も集めたし、元々スーパールーキーが何人も入ったという事で今後を見据えて練習試合等のビデオも撮ってあったのだ。

 まさかこんな早く頭角を表してくるとは思ってなかったが。

 充分に情報を集め、いざ本番。

 打てない。

 相手の一年生投手に良いようにやられて、弄ばれている。

 油断はしていなかった筈だ。

 だが、心のどこかで所詮一年と見下していたのではないか?

 そんな事を思いながら、打席に立っている。


 (なんで打てないんだ!? 確かに投げるボール全てが一級品だがここまで、二球種しか変化球を投げてないんだぞ!? まだ国無舘で投げたスライダーもある筈なのに)


 シンプルな組み立てでバットがくるくる回る。

 分かっていても止められない。

 結局、チェンジアップにバットが止まらず三振。

 ここまで、驚異の14奪三振である。

 トボトボとベンチに戻る内海は三波の顔を見た。

 その時の顔を内海は一生忘れないだろう。

 内海を見て悪魔のような顔で笑っていたのだから。

 

 ☆★☆★☆★


 先頭バッターをしっかり三振に抑えた俺ちゃん。

 なんか、内海の顔が引き攣ってたけどその顔は俺にはご褒美です。

 代わりに無料のスマイルを返しておいた。

 三振取る度に体力が回復していくような錯覚に陥る。  

 そこに悔しそうな顔がプラスされるともう、ねぇ? いくらでも投げれそう。


 点差が5点になったからか、大胆なリードも取れるようになって、それが逆に相手をまた惑わしてるのかな。

 今までのリードとまた違った配球に相手バッターはきりきり舞い。

 4番の中居はサードフライだったものの、5番の外川は三球三振でチェンジである。


 「スライダーとツーシーム、必要なさそうだね。実戦でまだ試したりないってのはちょっと不安要素なんだけど」


 「実戦で試したいけど、秘密兵器を残しときたい気持ちもあるんだよね。特に早実相手に。あそこ1番から9番までここのクリーンナップみたいな打線だろ? 3番.4番はプロ注だし」


 「じゃあやっぱりこのまま?」


 「うん。大丈夫だって! 本番に強い豹馬さんだぞ?」


 「はいはい。わかったよ。ほら、この回はパンにも打席回ってくるんだからさっさと三つ振ってきなよ」


 タイガに鼻で笑われながらネクストに向かう。

 そんな事言ってますけどね? あなた今日打ってないですよね? 人の事言えるんですかぁ?

 よし。ここは一発打って煽りに煽るとしよう。

 ふはははは! ストレート一本狙いじゃい!



 

 「あれ? あれれれれ? タイガきゅーん? 今日ヒット打ちましたっけー? たしかぁー人に三つ振ってこいでしたっけー? 振ってきましたけどぉ? 俺に言う前にまずは自分の事ですよねぇ?」


「こ、こいつ!! くそみたいな内野安打で調子に乗りやがってぇ!」


 煽る煽る。

 これでもかってぐらい煽る。

 俺はタイガの言う通り三つ振ってきましたとも。

 そして、3球目。 

 ストレート狙いの俺はカットボールにドン詰まり。

 しかし、転がる所が良くボッテボテの内野安打。でもヒットはヒットである。

 誰がなんと言おうとね!


 「はぁー。まぁ良いっすよ。後は俺に任せておいて下さい。残り2イニングしっかり抑えますんでぇ。この! ヒットを打った!! 俺がね!!!」


 あぁ。久々にヒット打ったから鬱憤が溜まってたみたい。

 ここでアホみたいに打たれたら格好つかないし、しっかり抑えて更に煽るとしますかね。

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